その選定プロセスは正しいと断言できるか?

一般的に「ベンダー選定」は、何から始めれば良いのでしょうか?
・良さげなベンダーを呼んで話を聞く
・複数ベンダーから相見積もりを取る

ベンダー選定に慣れているIT部門の方であれば、もう少し踏み込んで
・RFP(情報提供依頼書)を作って提示する

というプロセスをイメージされるのではないでしょうか。どれも必ず行うべきプロセスです。ベンダーを選定するためには、ベンダーヒアリング、ベンダーの相見積もり、RFP提示、どれも欠かせない必要なものです。

しかし、「最初のステップがそれか?」と言えば、違います。なぜなら、見積もりやRFPで声をかけるベンダーが正しいとは限らないからです。

例えば、主要な5社に声をかけて、じっくり話を聞く。その中で、良さげな3社から見積もりを取得する。その3社を厳正評価し、1社に決定した。一見、正しいように見えます・・・が、これで良いのでしょうか?

そもそも、なぜ「5社」からスタートしているのか。「主要な5社」は本当に「主要」なのか。他に選択肢は本当にないのでしょうか。

パイが全部で5個しかなければ、それで良いでしょう。しかし、全部で20個あるとしたらどうでしょうか?20個のパイを全部見てから、一番おいしそうなのを選びたいと思うはずです。

ところが、全体を見渡さずに、目の前にある5個しか見ていないことになります。残りの15個は視界に入らず、最初から無視していることになります。その15個に「好みに完璧にマッチした超大当たり」が含まれていたとしても、それに気付けないまま「選定ミス」を自覚せぬまま、終わってしまいます。

しかし、この話をするとIT部門の経験者からは怒られそうです。

「20社からいちいち見積もりを取るのか?無理だ!」

はい、その通りです。無理です。20社ものベンダーと何度もコミュニケーションを取り、見積もりを取るのは、時間がいくらあっても足りません。

その前に20社を相手にすると、私なら気が狂います。各ベンダーとの会話で頭が切り替わりません。毎日、メールのシャワーを浴びて、きっとメール返信の際に社名を間違えると思います(苦笑)。電話も鳴りっぱなし。一日中、20社とやり取りをしていると、気づけば終電・・・。そのうち病んで出社しなくなるかもしれません。

そこで、選定の技術を使うのです。

当社では、その技術を『ファネル選定』と呼んでいます。
(ファネル選定は、当社の登録商標です(登録番号第6672062号)。)
 

ファネル選定とは

ベンダープロセスは、まず最初に多くの候補をリストアップし、徐々に数を絞っていきます。そして最後に1社が残り、決定となります。

例えると、「予選リーグ」→「決勝リーグ」→「優勝決定戦」のようなイメージです。これを選定プロセスに沿って表現すると、下図のようになります。これががファネル選定®の概要です。


(※ 画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

図の中央は、ベンダーの数を表しています(数は例であり、プロジェクトによって変動します)。数を見て頂くと分かるとおり、徐々に数が減っていって、最後は1社になっています。

「ファネル」とは「漏斗(じょうご)」のこと。選定の過程でベンダーの候補数が徐々に減っていくため、逆三角形のイメージとなるところから当社では「ファネル選定」と名付けました。

ファネル選定®とは、最初は「広く浅く」で、次に「狭く深く」でベンダー選定を行うプロセスの総称です。
 

ファネル選定の各プロセス

ファネル選定®における各プロセスの概要を説明します。

① ベンダーリストアップ

可能性のあるベンダーを全てリストアップします。可能性が低そうだと思っても、いったん出します。ここでは「質」ではなく「量」が優先です。顧客の業種ではなく、システム種類(販売管理、会計、人事・給与、顧客管理など)で抽出することがポイントとなります。

② 情報提供依頼先リストアップ

候補リストから情報提供依頼書(RFI)を提示する先を抽出します。求めるベンダーの内容や性質によりますが、目安は10社程度です。

③ 書面による基本情報精査

RFIの回答を評価し、5社前後に絞り込みます。ここまでが「一次評価」となりますが、一次評価は「足切り」のプロセスです。必要機能を持っているか。同業他社への実績があるか。会社の規模や財務状況に問題はないか。「二次選考」の基準を満たさないベンダーをこのタイミングでスパッと切っていきます。

④ 提案依頼先を選定

この段階で初めてベンダーと対面でコンタクトをとります。提案依頼書(RFP)に基づき、提案をもらえるかを確認します。いくら優れたパッケージシステムを持っていたとしても、タイミングによっては、人が出払ってしまい「体制」を組めない場合もあります。また、直接会って話してみると「どうも想定とは大きく異なるようだ」といった状況も確認できます。それらを判断して、RFPの提示先を3~5社に絞ります。

⑤ 提案評価(提案書)

RFPに基づき、ベンダー提案書を評価します。最大の評価項目は「要求機能の充足度」です。どれだけ自社に対応できるのか、細かく点数を付けていきます。もう一つの大きな評価項目が「費用」です。どれだけ優れた提案でも、予算の10倍では採用できません。それ以外にも「プロジェクト計画」や「実績」など評価していきます。これら評価項目は、状況によって重要度が変わってきます。この提案書という「机上の評価」で、暫定の順位を付けます。

⑥ 提案評価(プレゼンテーション)

RFPでは読み取れない部分を、実際に合って確認します。その筆頭が「PM(プロジェクトマネージャー)の評価」です。ベンダー側のPMの質は、プロジェクトに大きな影響を与えます。そのPMが本物かどうかは、提案書からは読み取れません。直接会ってみて、「人となり」を見るのです。事前にPMのプロフィールを提案書で確認した上で、当日はPMからプロジェクト計画を説明してもらいます。その後、質疑応答タイムで、PMからの回答を確認してきます。

⑦ ベンダー最終選定

提案書の評価に対して、プレゼン評価を追加・更新し、最終順位を付けます。選定結果は全て資料にまとめ、透明性を確保します。まずは、プロジェクトメンバー内で結果を確認し、プロジェクトとしての結論を出します。その後、経営層に報告し、会社としての決定事項としていきます。ここでようやく、発注先が決定します。
 

ファネル選定を成立させる重要な技術

「ファネル選定®」は、どのような業界、業種でも変わりません。パッケージ導入かスクラッチ開発か、でも変わりません。選定の基本プロセスは「広く浅く」→「狭く深く」で進めていきます。

ただし、やり方によって「漏斗(じょうご)」の大きさは変わります。最初にどれだけ多くの候補を出せるか。出せば出すほど、選定の「精度」が高まります。

この「ファネル選定®」を成立させるためには、ある重要な「技術」が必要です。

この「漏斗」を大きくしても、破綻せずに、プロセスとして成り立たせる「技術」があります。それは何でしょうか?

「RFI(Request For Information):情報提供依頼書」 です。

RFIがあることで「広く浅く」が可能になり、その後の「狭く深く」に繋げられます。

当社では、「RFI」こそ選定における「発明」だと考えます。RFIが「漏斗」の「受け口」として機能するからこそ、選択肢が多くなってもプロセスで吸収できます。

特に、選定の重要度が高い「パッケージシステムの選定」においては、RFI無しではリスクが極めて高いと言えるでしょう。

(↓RFIについては、下記リンクをご参照ください↓)
RFIとRFPの違いは?
RFIの6大メリット
RFIの主な質問項目