RFIでは、メールのやりとりだけで、直接会うことはありません。RFIの説明やフォローをする機会もありません。

そのため、初対面の相手に失礼のないよう、負担をかけないよう、フォーマットに配慮します。難しい質問はせず、シンプルで基本的な項目のみに絞ります。

また、こちら側でも後で集計しやすい方が助かります。そのため、RFIの質問はエクセルで作り、エクセルのまま先方に送り、エクセルに直接回答してもらいます。変にPDFに変換はしません。エクセルで受け取ったら、コピペして簡単に集計していきます。

その上で、RFIで質問する「基本的な項目」とは何でしょうか?

私は、今まで多くのベンダーにRFIで質問してきました。質問の項目は、状況によって変わります。上手くいった質問もあれば、失敗した質問もありました。試行錯誤を繰り返し、今では主に次の質問をするようにしています。
 

(1) パッケージ標準機能

ベンダーが持つ「パッケージの標準機能」を確認します。

「えっ?ホームページを見れば載っているでしょう?」

と思うかもしれません。確かにホームページを見ると、パッケージの機能は必ず載っています。一番目立つところにデカデカと美しいグラフィックで載っています。

しかし、この情報では「比較」ができません。「Apple to Apple(同じ物、同じ条件での比較)」ではないからです。網羅していないのです。

10機能が必要だったとしても、このページでは「目玉機能」の3つぐらいしか分かりません。残りの7機能は、持っていないのか見えないだけなのか、分かりません。

そこで、RFIでは機能を網羅的に確認します。

ここで重要なのは「標準機能を書いてください」とは聞かない、ということ。フリーハンド(自由入力)で書かせると、ホームページと同じ回答が返ってくるだけです。あるいは、別紙のカタログファイルが添付されます。

そうではなく、こちらで欲しい機能をリスト化し、持っているか持っていないかを「○」か「×」で回答してもらいます。

ここで言う「機能」とは、「請求管理」「入金管理」「在庫管理」などざっくりした粒度で構いません。細かいシステム機能は後続のRFPで確認するので、ここでは不要です。大きな粒度で「×」が付くパッケージをあぶり出し、足切りをするためです。

なお、「標準機能」という言葉遣いは重要です。カスタマイズすると、あらゆる機能が対応可能となってしまうからです。標準として持っているからこそ、品質が担保され、ベンダーにノウハウが溜まっています。

この「パッケージ標準機能」は、RFIで最も重要な質問となります。
 

(2) カスタマイズ・アドオン開発の可否

インストール型のアプリケーションの場合は、カスタマイズはできます。ところが、クラウドサービスの場合、全社共通仕様としてカスタマイズできないケースがあります。

小規模なツールとして導入、業務をパッケージに寄せて標準化、などのケースはカスタマイズできなくても問題ありません。

一方で他社と差別化される機能・独自要求が多い場合には、選択肢として残せません。システムで対応できなかった部分は、全てシステムの外でエクセル等の運用となってしまうからです。運用が煩雑になってしまい、返って手間が増えてしまいます。
 

(3) トライアル有無

パッケージシステムをトライアル利用できるかどうかを確認します。これは、RFIにおいて、必須の確認項目です。

「本当に使えるのか?」「どんな操作イメージなのか?」

パッケージの紹介ページを見ただけでは、不安になることもあります。そうした不安を解消するには、実際に触ってみるのが一番です。

そこで「何となくいけそう」「全然ダメ」など、実際の感触を確かめられます。

トライアルについては、実施してもらえるベンダーとそうでないベンダーがあります。そのため、できないからと足切りするわけではありません。

しかし、後々トライアルができるかを確認する機会が必ず訪れます。実際のトライアルはまだ先の段階ですが、まずはトライアルができるのかどうかをRFIの時点で確認しておきます。
 

(4) 標準価格

パッケージを導入する際の標準的な「初期費用」、「維持費用」を確認します。
費用は、利用者の人数によらず固定金額の場合と、人数によって金額が変動する場合があります。そのため、どちらでも対応できるよう、人数を明記します。

「利用者100名とした場合の費用」と注釈を入れておきます。

また、現時点ではどれだけカスタマイズが発生するかが分かりません。それによって、費用は大きく上乗せされます。「カスタマイズ量が分かっていないので見積もりができません」とベンダーも回答してきます。

そこで「カスタマイズしなかった場合の費用」と注釈も入れておきます。

この時点で得られる費用情報については、あくまでも参考情報に過ぎません。しかし、標準価格の時点で遥かに予算オーバーすると足切りとなるため、確認しておきます。
 

(5) 実績・実例

パッケージでは、実績はかなり重要です。使っている企業が多ければ、その分、機能は洗練され、使い勝手が良くなるからです。同業他社での実績があれば、一定の信頼性も生まれます。

しかし、この実績はホームページに載せていないベンダーが多い。ユーザーの実名を出すには、ユーザー企業の承諾が必要だからです。

そこで、RFIの「閉じた空間」で聞き出します。このRFIで回答したところで、公表されるわけではないので、ベンダー側も書きやすくなります。

「可能な範囲で導入社名を記載いただけると助かります」と添えておきます。

ここで実績件数があまりにも乏しかったり、自社とかけ離れている業界の企業ばかりであれば、足切りとなります。
 

(6) 企業情報

ベンダーの企業規模は様々です。どんなに他の項目が良くても、ベンダーの財務状況が悪かったり、従業員数が極端に少なかった場合は、リスクが大きくなります。

代表的な項目は、企業名、設立年月日、本社所在地、売上高(3か年)、税引き前純利益、総従業員数、主なグループ企業、等です。

きちんとホームページの「企業情報」に掲載しているベンダーの方が多いですが、ここは一律回答してもらった方が、抜け漏れもなく比較しやすくなります。
 

(7) 貴社の強み

RFIにおいて唯一のフリーハンド項目。定型質問だけでは、ベンダーのアピールや、熱意を書き込めるスペースがありません。そこで最後に自由入力欄を設けて、書いてもらいます。

RFIは「足切り」が主な目的なので、判断順位は下がりますが、この項目からいろいろな情報が読み取れます。

この項目は、熱意のあるベンダーほど、分量は多くなります。逆に「特になし」と書かれてあったら、営業は全くやる気がありません(笑)。当落線上にあるベンダーはここで「足切り」です。

「弊社は小規模のxxxに特化したサービスを提供しています」とベンダー側から前提を置いてくることもあります。これは「御社は大企業なので、ウチのような小さな会社は合わないのでは?」とアラートを上げているとも読み取れます。

可能性が小さい中で粘ってもお互いが不幸になるので、回答の意図をくみ取りながら「見送り」とする事もあります。

自由入力だからこそ、行間が読み取れて、貴重な情報が得られる場合があります。
 

RFIでは、あまり項目は盛り過ぎず(もう既に多いですが)、基本的なものに絞ります。足切り判断に影響しないものは、全てRFPの方に回して、後で詳しく確認していきます。

RFIは「広く浅く」のツールです。エクセルで質問事項を固めて、それを大量配布してベンダーにばらまくイメージです。多くのベンダーから情報を集めて、選定の質の「底上げ」を行います。

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