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今は本当に情シス人材の採用は難しいのか?

2023

2/15

今は本当に情シス人材の採用は難しいのか?

情シスは採用難?

「本当に情シスの人材は採用難なのか?」

A社の情シスは5名いますが、いつもメンバー全員は夜遅くまで対応に追われています。

ヘルプデスク、PCやスマホ機器のキッティングや故障対応、サーバーやネットワーク管理、そして基幹システムの保守・運用、さらには新しいプロジェクトへの参加など、フル回転しています。

これらを5名ですべてカバーしているため、時間はいつも足りません。

人手不足は明らかです。

この状況に危機感を募らせる情シスリーダーは、今期中に2名の増員を目指すことにしました。

しかし、ニュースによると、今は空前の「採用難」とのこと。

果たして、本当に今は情シスの人材は、採用が難しいのでしょうか?

市場の動向はどうなっているのでしょうか?

人材紹介会社に聞いてみた

早速、A社に同伴してヒアリングしました。

IT専門の人材紹介会社に来てもらい、詳しくお話しを聞いてみました。

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――― 情シスの採用市場はどうなっていますか?

(人材紹介会社)IT業界全体でマーケットが非常に過熱しています。IT人材の求人倍率は昨年9月で10倍、12月で12倍まで膨れ上がっています。これは全職種でぶっちぎりのトップで、最も採用が難しい職種となっています。

例えば、大手SIerのXXXX社では、中途採用でも「100人単位」で採用をかけていて、トップ企業同士で人材の奪い合いに発展しています。大手ユーザー企業のXXXX社もDXを進めるために「青天井」で採用をかけていて、とれる人は何でもとっているような状況です。

――― 年代別の状況は?

30代~40代は、働き盛りでどこも欲しがるため、非常に難しい。特に30~35歳は職種を問わず人気があるため、ほぼ市場には出てきません。

そうなるとターゲットをもう少し下げて20代に移っていきますが、そもそも日本の労働環境として、20代は人口が少ないんです。採用をかけても大金を積まないとまったく引っ掛かってきません。新卒ですらIT人材はビックリするような年収で取る時代になってきています。20代も極めて困難といえるでしょう。

そのため、比較的取りやすく狙い目となるのは50代です。すでに2~3社経験していて、最後の定年までを視野にいれているので落ち着きやすい。コミュニケーション経験も豊富なので、ユーザーからのワガママな要求や無茶ぶりにもストレスを抱え込まずに対応できます。年齢が高くても技術者上がりの人が多いので、手を動かすことができるのも特徴的です。

――― IT人材の中でも特に難しい職種は?

例えば「インフラ人材」は大手企業から中小企業まで、どの企業でもほしがっていて、最も難しい人材です。そのため大手は、現在年収に100万円~200万円を上乗せしてでも奪おうとするほどの過熱ぶりです。基本的に転職回数が多いとユーザー企業は敬遠しがちですが、この職種は別です。技術さえあれば、6回~8回の転職があってもすぐに他社にとられてしまう状況です。

――― ITベンダーからの転職理由は?

やはり年収アップが一番多いですが、そこは大手とかち合ってしまうので、そこで勝負するのは得策ではありません。
一方で、ベンダー側の所属だと、常駐先のクライアントに使われる立場になります。誰よりも業務とシステムを分かっていても、自信があったとしても、立場が違うのでやれることに限界があります。そこを転職して事業会社側で自分の能力を自分の会社にコミットしたいという思いがあるようです。そこにうまく訴求できるように募集をかけるべきでしょう。

――― 他方、情シスからの転職理由は?

より大きな規模の会社で働きたい、その結果として年収を上げたい、そしてポジションを上げていきたい、と考える人が多いようです。自身の能力をより大人数で広範囲に影響させて、ステップアップしたいのだと思います。人間関係が理由の場合もありますが、規模感を高めたいという動機を一番多く聞きますね。

――― 情シスに応募してくる出身の比率は?

圧倒的にITベンダー側からの応募が多いです。情シス経験者はほとんど市場に出てきません。私も探してはいるのですが、レア中のレアですね。
そのため、ITベンダーから採用する前提で、即戦力としてではなく、育成も含めて考えていく必要があるかと思います。自社の「事業内容」や情シスの「幅広いタスク」はすぐには習得できず、長期的に仕込んでいく考えを持つことも大事です。

――― この状況で採用可能なのですか?

情シス側は、採用条件を緩和する努力が必要です。
例えば「転職回数」を2回までのところ、5回まで目をつぶる。「学歴」を問わない。「年齢」のゾーンを上と下に広げる、など。特に上を50代まで広げると紹介しやすくなります。下は20代の前半まで広げて、新卒や第二新卒も含めて、即戦力は諦めて育成を念頭においた「青田買い」も考えられると思います。
また、打ち出し方も工夫が必要です。社内SEとして「安定」して幅広い知識が習得できます、開発プロジェクトのようにガツガツしたり、重いプレッシャーがかかったりといった高ストレスはなく「働きやすい職場環境」といった言い回しが考えられます。

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人材紹介会社には、その後も金額条件や募集スケジュールなどの細かいお話しをいただきました。

まだ1社しか聞いていないので、この情報を鵜呑みにすることはできません。他社にもヒアリングをかけてみる予定です。

しかし、現在はマーケットが厳しく、良い人がすぐにとれる状況にはない・・・、ということは強く伝わってきました。

社内外の環境に対して情シスがどう反応するか

その後、A社の情シス内で方針をまとめました。

・すぐに採用できない前提で長期的に考える
・現有戦力で余力をもって回せるように変えていく
・社内タスクをたな卸しして、社員はコア業務にシフトする
・ノンコア業務は外注や派遣をうまく使う
・定期的に人材会社に接触し、市場動向を把握しておく

外では、情シスをとりまく人材市場が厳しくなっています。

内では、以前と比べてはるかに情シスがやるべき役割も増えています。

このまま現状維持だけを考えると、目の前の仕事に忙殺されるだけです。

この外部環境と内部環境をふまえ、情シスも柔軟に対応していくべきでしょう。

役割を取捨選択するタイミングがきています。

・どのノウハウを情シスに残したいか?
・社外に出してはいけないタスクは何か?
・ユーザーに引き渡せるタスクはないか?
・自動化や合理化でなくせるタスクはないか?

A社では、これからじっくりと検討していくことになりました。

貴社のIT部門・情報システム部門は、現在のIT市場動向をふまえて対策を練っていますでしょうか?

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情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。