ベンダーのリストアップは何社から始めるか?

今はスクラッチ開発ではなく、パッケージ導入の時代です。

パッケージは選定が全てです。どんなに実績がある素晴らしいパッケージであっても、自社にマッチしなければ意味がありません。

そのため、5社程度では少なすぎです。では何社が良いのでしょうか?

私の考えは「50社」です。

最初の選択肢は多ければ多いほど良い。「選定のじょうご」は大きいほど、選定の質が上がるからです。まず「50社」をリストアップし、そこからRFIを出す先を「10社」に絞ることが目安となります。

最初のリストアップは「数」に基準を持つべきです。

なぜなら、数は個人の感覚に任せてしまうと、バラつくからです。「十分に洗い出した」は個人の感覚によって異なります。

例えば「もう洗い出した」と5社のリストを持ってきた人に「いったん50社まで出せますか?」と聞くと「たぶん大丈夫、やってみます」と言われます。特に5社だった根拠があるわけではなく、基準を示せば、そこに合わせて皆さんやってくれます。

リストアップは、どこで探すのを辞めるか、思考停止するかの「境界線」をどこに置くか、だけの話です。

ベンダー選定には、定量的アプローチが必要。「数」の基準を設けてルール化することで、品質を確保できます。誰が選定しても一定の品質を保てます。

選定をマニュアル化するとかの面倒な作業はいりません。「50社→10社→1社」と数だけ決めればいい。そして、この基準で一度、ベンダー選定を行うだけです。すると今後は、これがテンプレートとなって、まずは50社がスタートとなります。
 

数が多いことに意味がある

数にこだわるもう一つの理由があります。

それは「納得性」です。

特に経営層への「納得性」で大きな差が出てきます。

仮に5社~10社だと「本当にこれで全部か?」と突っ込まれ、「もう少し調べます」と延長戦に突入します。「A社やB社は調べたのか?」と聞かれて「そこは調べていません」となると、やり直しになってしまいます。

ところが50社だと、そのような質問は出ません。「こんなにあるのか!」という反応です。「A社やB社はXXの機能がないので見送りました」と即答できて、スムーズです。

会社にとって大事なシステムを選定する際に、この「納得性」はとても重要です。そしてこれは「数が多い」ことで担保されます。

実際には、ニッチな領域は50社もないかもしれません。でも、まずはその数を前提にリストアップを進めることが重要です。10社、20社で思考停止してしまわないよう、「まだあるはず」という想定で探すからこそ、最初の調査に浮上してくるのです。
 

ある出版業システムのリストアップ事例

ある出版社の販売管理システムの選定をお手伝いしたときのことです。

「出版業」のシステムは、私自身はじめてであり、パッケージがどれぐらいあるのか検討もつきませんでした。

それでも、最初のリストアップは「50社」を目指しました。

まずは、販売管理パッケージの基本機能として「小売管理」「在庫管理」「請求管理」「入金管理」の機能を持つパッケージを探します。

その結果、「55社」をリストアップしました。

「販売管理」は、もともとパッケージが豊富にある領域なので、探せばあるものです。インターネットで根気強く探せば、すぐに数は集まります。途中からゲーム感覚で、とにかく数を求めて、リストアップを進めました。

その「55社」を一覧表に「見える化」して、そこから絞り込みに入ります。

次はRFIを提示する先なので「10社」を目標にしました。

条件としては、「出版業」ならではの固有機能である「取次管理」「定期購読管理」「広告管理」「印税管理」を持つパッケージに限定します。

「さすがに、この領域はマニアックすぎて、ほとんど残らないのでは?」

と正直不安になりました。しかし、そんな不安をヨソに、なんと「14社」も残りました。ホームページを見に行くと、どこも「出版業に特化したシステム」と謳っています。「探せばあるもんだね~」と顧客も驚いていました。

予定よりも多かったのですが、その「14社」に対して、RFIを提示しました。

これがもし、最初のリストアップが「10社」や「20社」だった場合、RFIを提示できたのは「5社」ぐらいだったと思います。

選定は、きちんとしたプロセスを踏むことが重要です。

「選定のじょうご」が大きいほど選定の質が確保できます。そのため、最初は「広く浅く」で数にこだわりましょう。

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