費用は「初期費用」と「運用・保守費用」に分かれる

ベンダー選定において「費用」は大きな判断要素です。

いくら立派なシステムでも、予算をはるかにオーバーしていたら採用できません。そのため、関係者は費用に強い関心があります。

とりわけ気になるのが「イニシャルコスト」(初期費用)です。こちらは金額が大きく、予算に対するインパクトが非常に大きいからです。

しかし、現代のベンダー評価においては「5年トータル費用」で評価すべきです。

なぜなら、ベンダーのビジネスモデルが大きく変わってきたからです。

昔は、「オンプレミス」かつ「スクラッチ開発」だったので、ハードウェアの調達も含めて、初期費用だけが金額として大きく、後は細々とランニングコスト(運用・保守費用)がかかる状況でした。

いわば「買い切りモデル」なので、イニシャルだけ気にしていればOKです。経理的には、資産として購入し、減価償却していくのが当たり前でした。

ところが現在は「クラウドサービス」の時代です。

初期費用を抑えて、ランニングコストで稼ぐモデル。パッケージ化されたサービスは、開発費用が大幅に減ります。インフラは自前でサーバーを持つ必要がなくなり、ハードウェア費用はそもそも不要になります。

一方でランニングコストは大幅に増えます。イニシャルはほとんどかからないが、ランニングが高いというのが、現在の主流です。費用がイニシャルからランニングに移っただけともいえます。

そのため、費用評価は、昔ながらのイニシャルコストだけを見ても意味がなく、かといってランニングコストだけを見ても意味がありません。

イニシャルとランニングを合わせた「5年トータル」で見る必要があります。

極論すると、費用評価はこの「5年トータルコスト」の1項目で全てともいえます。
 

費用明細を各社でそろえる

では「費用を細かく見ないでよいのか?」と思うかもしれません。

ですが、そうではありません。むしろ費用は細かくみるべきです。

なぜなら、ベンダーの費用見積もりは、各社で前提が異なっている場合が往々にしてあるからです。

例えば

「クラウド監視にかかる費用は別途見積もります」
「VPN接続に関する費用は含みません」
「他システム連携にかかる費用は要件定義後にお見積りいたします」
「データ移行は貴社にて実施いただく想定です」

みたいなものが、さらっと小さなフォントで目立たないように書いてあったりします。

これらの内容が、一方のベンダーには含まれていて、他方には含まれていないとなると「アップル to アップル」になりません。困ったことに、この見積もりにおける「前提の相違」は、極めて高い確率で発生します。

そのため、費用は細かく分解して、各社横並びにして比較できるようにしないといけません。見積もり前提をそろえるためです。

この明細比較で、含まれていない費用項目をあぶり出し、含まれていない場合は追加見積を依頼します。場合によっては、その費用だけはスコープ外となり、他社に見積もりをとるケースも発生するかもしれません。

もし、部分的に見積もりがとれないケースが出てきたら、そこの部分は他社の最大値を仮置きしてでも、強制的に前提を整えます。

経営層の立場からすれば、後から追加費用が発生する方が困ります。社員数が5年間で大幅に増えて、ライセンス費用が増える可能性があるなら、これらも見積もりに含めてもらいます。

このシステムを導入するのに5年トータルでいくらかかるのか?

この問いに答えるために、見積もりの明細を深掘りして、前提を合わせた上で「5年トータル費用」を評価します。ここに大きな「ウェイト」を設定し、スコアリングしていくことになります。
 
 

(関連記事)
【提案評価】定量評価と定性評価をどう使いこなしていけばよいか?
【提案評価】ベンダー提案の5大評価項目とは
【提案評価その1】要求機能が最重要
【提案評価その1】要求機能のFIT率60%をどう考えるか?
【提案評価その3】実績は数と質の両方をみる
【提案評価その4】プロジェクト計画の6つの評価項目とは?
【提案評価その5】その他項目を評価し、バランスをとる

ベンダー提案評価資料の作り方(サンプル画像付き)