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DXの時代、大手のプライムベンダーではなく中小の協力会社ベンダーと契約する理由とは?

2023

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DXの時代、大手のプライムベンダーではなく中小の協力会社ベンダーと契約する理由とは?

最近増えている相談

「誰か良い技術者を紹介してもらえないですか?」

昔から情シスは人手不足で、特に手を動かせる「技術者」はどの現場でも重宝されてきました。

しかし、最近はこの技術者を要求する現場が大幅に増えています。

どこの会社の情シス責任者と話しをしても、話題に挙がるので、時代が変わりつつあるのを感じます。

従来は、大手の「プライムベンダー」がいて、その参加に多くの「下請けベンダー」がぶら下がっていました。この構図が崩れてきています。

今、現場では何が起こっているのでしょうか?

大手プライムベンダーの環境変化

大手のプライムベンダーといえば、どこをイメージしますか?

ここでは固有名詞は出しませんが、いくつか社名が挙げられると思います。

今までは、その大手ベンダーが大活躍しました。

なぜなら、大規模な「スクラッチ開発」が多く、巨大な「組織力」が求められてきたからです。多くの「協力会社ベンダー」を傘下に収める必要がありました。

ところが、今は違います。

基幹システムは「パッケージシステム」に置き換えられ、ベンダー側は少数精鋭で導入を支援してくれます。

攻めの領域は、小規模な「アジャイル開発」で実績をつくり、うまくいけば横展開するケースが増えてきました。

つまり、巨大な組織力に頼らないといけないケースが大幅に減ってきているのです。

そこで今、密かに脚光を浴びているのが、プライムベンダーの下請けだった「協力会社ベンダー」の存在です。

協力会社ベンダーの魅力と可能性

まずは、協力会社ベンダーの特徴を挙げてみます。

(協力会社ベンダーのデメリット)

・大規模開発のマネジメント経験がない
・丸投げできない
・営業力がない
・実績が乏しい
 

(協力会社ベンダーのメリット)

・手を動かせる技術者が多い
・単価が安い
・営業が低姿勢
・マネジメントしやすい
 

一言でいうと、一長一短あります。

しかし、これはユーザー側にはチャンスです。

ユーザー側の動き次第で、デメリットを打ち消し、メリットだけを享受することができるからです。

主な活用シーンを3つ挙げてみます。

① 内製によるアジャイル開発

技術者に派遣で入ってもらう。ユーザー側できちんとマネジメントできれば、必要とするのは技術力。大手に頼むとそこから下請けの技術者をアサインするので、マージンが含まれて単価が高くなる。しかし、その技術者と直接契約すれば、大幅に単価が安くなる。びっくりするぐらい安くなる。
 

② パッケージの周辺開発

パッケージシステムに直接カスタマイズをせずに「外付け」で機能を追加することはよくある。そのようなケースで、ユーザー側に技術者がいると選択肢が広がり、とても重宝する。
 

③ オンプレからクラウドへの移行

多くのオンプレミスサーバーを所有する企業にとっては、クラウドに移行したいニーズは強い。しかし、一斉移行には大きなリスクを感じる。そのため、段階的に試しながら、少しずつ移行していくことになる。このようなケースでは、ユーザー側に数名の技術者がいて、実際に手を動かし、移行するのが現実的で、都合がよい。
 

従来の大手ベンダーのように、マネジメントも含めて「丸投げ」することはできません。しかし、そもそも丸投げするからコントロールできなくなり、依存し、足元を見られてしまいました。

プライムベンダーが間に入ることで、過度な成果は単価交渉の材料にされたり、手を動かせないプライム社員の穴埋めをさせられたりで、パフォーマンスが悪くなってしまうケースもありました。

ところが、間に余計なベンダーが入らなければ、技術者に対して直接指示ができて、マネジメントしやすくなります。

本来、技術者はサービス精神が旺盛で、パフォーマンスが良いと考えます。

要するに、ユーザー側でマネジメントする力があれば、開発費用を大幅に抑えられ、俊敏性や生産性も高められるのです。

デメリットはユーザーが補完する

ただし、1つだけ注意点があります。

今、付き合っているプライムベンダー傘下のベンダーと直接契約し、「中抜き」することは控えましょう。

その出会いは、プライムベンダーが営業努力し、多額の広告宣伝費を投下した結果です。逆を言えば、下請けベンダーは営業努力をしていないのに、プライムベンダーの成果だけを横取りすることになるので、違うと思います。

あくまで、今の契約を変更するのではなく、別ルートで、正規のルートで見つけたベンダーと契約することです。

協力会社ベンダーのデメリットである「営業力がない」はユーザー側が補完しないといけません。

インターネットでも検索上位には出てこないので、辛抱強く下まで探す必要があります。

人脈を頼りに誰かからの紹介や、各種メディアの関連記事からの検索など、アンテナを広く張り、あらゆるルートから「掘り出し物」を見つけていく姿勢が重要です。

ユーザー企業の「目利き力」が問われるということです。

情シスにとっての重要なピース

今後、DXを加速したいユーザー企業にとって、この「協力会社ベンダー」とどう付き合うかは、大きなテーマとなります。

この付き合い方によって、成果とコストパフォーマンスが大きく変わってくるからです。

情シスにとっても、すべて社員で内製するよりも、外部リソースをうまく組み合わせた方が、組織として柔軟な対応をとることができます。

そのためには、これからの情シスに「マネジメント力」と「選ぶ力」がより一層求められるということです。

貴社のIT部門・情報システム部門は、大手プライムベンダーと中小の協力会社ベンダーをうまく使い分けできていますでしょうか?

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。