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プロジェクトは「影響の輪」の中でやるしかない

2023

7/27

プロジェクトは「影響の輪」の中でやるしかない

まったく動かないプロジェクト

「プロジェクトが動かないメンバーばかりで心が折れそうです」

ある情シスのPMOメンバーがボヤきました。

このプロジェクトは、体制に大きな問題があります。

現場の定型業務しかやったことがなく、課題を整理したり、改善を検討したり、関係者と調整したりというタスクが苦手な人たちが集まっていました。

つまり、プロジェクトに不向きな人たちばかりです。

プロジェクトでTo-Doを設定しても、スキル的にできない、何をどうしていいか分からない、そもそもやる気がない、という厳しい状況です。

もっとできる人をアサインしたくても、その会社にはそれ以上の人材はいません。

新しく採用予定もありません。

そのため、プロジェクトを進めたくても、まったく進みません。

定例会ではPMO一人がずっと発言していて、空回りが続きます。

このような八方塞がりの中で、情シスPMOはどのようなスタンスで臨めば良いのでしょうか?

まずは受け入れる

「現有戦力でやるしかない」

まずは、このどうしようもない「現実」を受け入れるところからスタートします。

嘆いても、文句をつけても、ストレスが大きくなるだけです。

まずは自分のメンタルを守るため、ストレスを感じるような考え方を変えていきましょう。

その上で、プロジェクトの領域を3つに分けて考えていきます。

① 直接的にコントロールできる領域
② 間接的にコントロールできる領域
③ コントロールできない領域

特に、②と③を適切に考えられるかどうかが、プロジェクトを推進していく上で、腕の見せ所となります。

プロジェクトにおける3つの領域

考えやすい順に解説していきます。

① 直接的にコントロールできる領域

こちらは、自分が担当するタスクのことです。

特に説明するまでもなく、自分ががんばれば、がんばっただけ進みます。

自己管理のもとで、コントロールできる領域です。

③ コントロールできない領域

プロジェクトは、多くの「外部環境」に左右されます。

例えば以下のようなものです。
・政治動向
・法律や規制の改正
・市場や業界の動向
・取締役会の決定内容
・メンバーの家庭の事情や病気、体調不良等による休み
・社内の人材不足、スキル不足
・緊急タスクの割り込み

ここにパワーを割いても、個人で影響を及ぼせる範囲はほとんどありません。

「プロジェクトの制約事項」として受け入れ、すばやく気持ちを切り替えることで、無駄な工数やストレスを最小化できます。

環境変化に適応し、そのときの最善の手を打っていくしかありません。

② 間接的にコントロールできる領域

自分以外のプロジェクトメンバーが担当するタスクが該当します。

本来的には、他人がどう行動するかはコントロールできません。

一方で、他人の行動に対して、自分がどう「反応」するかはコントロールできます。

プロジェクトにおいては、この「反応の引き出しの多さ」が、プロジェクトの進捗を大きく左右していくことになります。

(遅延時の反応の例)
・期限を再設定し、依頼する
・Next Actionを一緒に考える
・頭を下げ、頼み込む
・打ち合わせや面談をする
・メンバーの上司に相談する
・プレッシャーをかける
・指示、命令を出す
・メンバーを入れ替える、外す
・励ます、応援する
・手本を示す
・サンプルやテンプレートを渡す
・今回だけ巻き取る
・モチベーションに火をつける
・メンバーの動機づけをする
・プロジェクトとキャリアアップを紐付ける

この中でよく見かけるのは「プレッシャーをかける」「指示、命令を出す」でしょうか。

この方法も場合によっては有効ですが、これしか方法がないと、プロジェクトは疲弊し、空中分解してしまいます。

「自分には管理の引き出しがない」と言っているようなものです。

状況や相手に合わせて反応を選択し、プロジェクトを進捗させていくのが本当のプロジェクト管理者といえます。

相手によってアプローチを変える

そのメンバーの年代によって、効果的な方法は変わってきます。

例えば、50代のメンバーに未来を熱く語っても、今さら響くことは少ないでしょう。

「その通りだね」「良いこと言ったね」と同意はしてくれますが、その人自ら動こうとはしません。

老獪な話術で、穏やかな表情で、熱量がブラックホールのように吸い込まれていきます(苦笑)

それよりは、素直に頭を下げて協力を要請したり、その人がもつノウハウを次世代に繋げたいといった大義を持ち出す方が有効です。

オブザーバーという役割を担ってもらい、権威を守りつつ、プロジェクトと距離をとることも選択肢です。

社長などの経営層から強烈な指示を出してもらうことで、状況を打開できる場合もあります。

一方で若手の場合は、モチベーションに火をつける方法やキャリアアップを一緒に考える方法は有効です。

逆にプレッシャーをかけすぎると、簡単に転職されてしまう時代なので得策ではないかもしれません。

また、それ以上に、人の性格や資質によって有効なアプローチは変わってきます。

それぞれの特性を見極め、少しずつ、その人なりの戦力化を拡大していくしかありません。

その人の弱点を認識し、長所を引き出す。

その集合体がプロジェクトとなります。

私が出会ってきた尊敬するPMOは、例外なく共通することがあります。

それは、この②の「間接的な影響範囲」がものすごく広いということです。

PMO一人ができることは限られますが、自分の影響範囲を徐々に広げていくことはできます。

周りの人を巻き込み、動かなかったプロジェクトが動いてきた現場を、私は何度も見てきました。

動き出したプロジェクト

「以前よりは進めやすくなりました」

冒頭のPMOメンバーは、タスクを全面的に見直しました。

プロジェクトメンバーへの反応も変えました。

感情的にならずに、淡々と「Next Action」を一緒に決めていきます。

ある一人の若者が覚醒しつつあり、プロジェクトの大きな希望となっています。

貴社プロジェクトでは「現有戦力」で効果的に進められていますでしょうか?

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情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。