情報システム部門・IT部門が強くなるためのプラットフォーム

攻めの情シス研究所

情シスにノウハウを。
情シスが会社を強くします。

情シスに兼務社員は有効なのか?

2023

11/22

情シスに兼務社員は有効なのか?

第二の選択肢

「情シスを兼務というのはアリなんですか?」

IT戦略を策定中の情報システム部長から質問を受けました。

IT戦略の一環として、情シスの組織戦略を見直しています。

今までは主に「守りのIT」だけでしたが、今後は「攻めのIT」にも力を入れるべく、各役割とアサインを見直しました。

しかし、どうやっても攻めの人材不足です。特に今後予定されている大規模プロジェクトへのPMOメンバーが足りません。

そこで増員を計画して、人事部長に調整をかけました。

すると、今すぐの増員は厳しいとのこと。ただし「兼務」であれば、2名ほど引っ張ってこれるかもしれない…と言われました。

果たして、情シスにとって「兼務」は有効なのでしょうか?

兼務への不安

情シスが攻めの役割を担っていく上で、PMOの役割は欠かせません。このPMOのスキルの中で、とりわけ重要なのが「業務知識」です。

現場を知らないと、進捗管理も課題管理もできないからです。

そのため、現場から移籍してきたメンバーはPMOとして重宝します。

情シスの都合でいえば、完全移籍してほしいものです。情シスは常に人手不足なので、フル稼働してくれないと困ります。

それなのに兼務は、単純に稼働工数が少なくなります。

中途半端に掛け持ちだと、責任をもった仕事ができないのでは?
腰掛け程度しかやらないんじゃないか?
情シスの仕事は甘くないぞ?

そんな疑念も浮かんでくるでしょう。

兼務のメリット

一方で、兼務にも良いところがあります。

① 現役なので、業務知識が劣化しない

情シスに「元ユーザー」は多いですが「昔、私がいたころには〜だった。でも今は聞かないとわからない」とよく言われます。これが、兼務社員であれば、今なお現役なので、スムーズに次の一手が打てます。
 

② 現場と合意形成がとりやすい

兼務先の上司や同僚を通じて、関係者を集めて打ち合わせを行いやすくなります。ユーザーの意見や不満も兼務社員に集まりやすく、課題解決も早くなります。両方の部署に所属している人こそ「橋渡し役」としては最強なのです。
 

③ 業務知識を情シスに還元してくれる

兼務の人は、IT知識が不足しているので、情シスメンバーに教えを請います。交換条件として、業務知識を丁寧に教えてくれます。情シスメンバーは、初歩的な質問でも聞きやすくなります。「IT⇔業務」でお互いが情報交換でき、情シスに貴重な業務知識がインストールされていきます。
 

④ 若手エースを引き込みやすい

現場にはITをもっと活用したい、ITスキルを身に着けたいと思う若手は多くいます。ですが「本業は続けたい」「自分はエンジニアじゃないので情シスは難しい」と、完全移籍には難色を示します。ところが兼務であれば、その抵抗感を払拭できるのです。その結果、若手エースを兼務で迎え入れられる確率が上がります。
 

⑤ 兼務の人はモチベーションが高い

兼務を担う方は、能力が高く、新しい知識やスキル獲得に意欲的です。そのような人が情シスに交じることで、周囲の情シスメンバーも刺激を受けます。業務知識が増え、現場接点も増え、攻めの雰囲気が出てきます。
 

工数的には、もちろん移籍が望ましいですが、現場と密に調整していくPMOであれば、むしろ兼務は好都合といえます。

つまり、情シスにとって「兼務」は有力な選択肢なのです。

兼務の好循環

「ずっとこのまま続けたいです!」

冒頭の情シス部長は、現場と兼務の社員を2名、招き入れました。男性と女性、それぞれ1名ずつでしたが、これが大当たりします。

男性の方は非常にパワフルに現場調整を行い、業務知識だけではなく、推進力も大きな助けとなりました。

女性の方は、細やかな調査と資料作成で、現場からの信頼が厚い人でした。その人が意見すれば、ほぼ合意に至る凄さを見せつけます。

この両者がキーパーソンとなり、プロジェクトは大成功しました。

先日、お二方に話を聞いてみたところ、両者とも兼務は気に入っている様子。

「自分にとってはスキルアップも実感できて、外部のベンダーと一緒に仕事をできるのも刺激的。社内で顔も広くなり、本業にも良い影響が出ている。自分にとっては都合がよすぎるので、このまま続けたい」

とのこと。その人を取り囲む情シスメンバーのモチベーションも高くなり、情シス全体として、攻めの雰囲気も出てきました。

貴社のIT部門・情報システム部門は「兼務」をうまく取り入れていますでしょうか?

関連コラム

御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。