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システムの企画がダメだった場合にどれほどの代償を伴うのか?

2021

5/25

システムの企画がダメだった場合にどれほどの代償を伴うのか?

完璧だったプロジェクト

「プロジェクト自体は完璧に進められたのですが…」

その「営業支援システム導入プロジェクト」は、失敗が許されないプロジェクトでした。

そのため、ベンダー選定時は、実績を重視して高額なベンダーと契約しました。

プロジェクト管理も強化するため、コンサルタントを雇い、社内のPMO体制も整えました。

そのおかげもあり、スケジュールは一度も遅れることなく、当初予算もピッタリと収まります。マスタの誤りや設定ミスに伴う不具合もすべて解消し、本番稼働を迎えました。

稼働後半年が経過しました。当初の計画通り、ユーザーにシステムに関するアンケートをとります。

その結果、ユーザーから批判や不満が殺到しました。

「なぜ導入前に説明も相談もしてくれなかったのか」
「そもそもこのシステムで何がしたいのか」
「このシステムに入力したデータがどう使われるか全くわからない」
「システムが使いにくいからエクセルにも入力しているが二度手間」
「このシステムに時間を取られ、足を引っ張っている。ありえない」

業務の「見える化」に力を入れた結果、営業担当者が入力する項目が膨大に増えました。「営業日報」は当日中に入力することを全社員に義務付けています。その結果、営業担当者は日報入力のための残業が増え、引き換えに商談時間が減っていきます。

また「営業日報」を現場の上長がどう使っているかを確認すると「月末にチェックする程度」とのこと。日報もだんだんコメントが少なくなり、最近では有用な情報もありません。当初の目的である売上アップに関わる分析や行動に繋がっていませんでした。

そうこうしているうちに、現場は繁忙期に突入したため、システム入力はいったん免除となります。しかし、繁忙期が終わった今も、現場の入力が復活することはありません。従来のエクセルが使われている状況です。

「要件を完璧に満たした高機能なシステム」と引き換えに、売上が増えることもなく、現場の手間が増え、最終的にはシステムが使われなくなったのでした。

最初がダメだともう後戻りはできない

自社にとって最適なシステムを導入するためには、何が必要でしょうか?

逆算していくとわかります。

システムを作るためには、設計書が必要です。設計書をつくるにはベンダーが必要。ベンダーを選ぶにはRFPが必要。RFPを作るには、前提となる企画書が必要です。

つまり「最適なシステム」を導入するためには、大前提として「最適な企画書」が必要なのです。

企画が最適でないと、その後いくら頑張っても取返しがつきません。間違った方向に突き進み、間違ったシステムが作られるだけです。

もし企画担当者が承認を通すためだけに、美辞麗句な文言だけを並べたらどうなるのでしょうか?インパクトを重視するあまり、ロジックが破綻していたり、実現性がゼロだったりするかもしれません。

しかし、承認されてしまえば、もうおしまいです。

企画に従い、「システム」の構築プロジェクトが進んでいくだけです。

プロジェクト管理は、スケジュール、予算などの制約の中でどう「やりくり」するかに主眼が置かれます。

プロジェクトマネージャーは、その制約下で企画を計画通りに進めることを求められています。

そこには「企画が正しい」という前提があります。プロジェクトは多忙を極めるため、途中で「企画は本当に正しいのか」と考える余裕もなく、問われることもありません。

企画時に一度敷いたレールはもう走り出すしかなく、走ったが最後、止まれなくなるということです。

目的を果たしてこその企画書

プロジェクトの方向性を定めるのが「企画」フェーズです。

企画がダメだったら、その後どんなに優秀なベンダーやコンサルタントに頼んでもダメということです。

なぜなら、そのダメな企画に沿ったシステムが「立派」に出来上がってしまうからです。

「とりあえず理想論で押し切ろう」
「ベンダーと後で考えればいいや」

と、経営会議で承認をもらうことだけを考えて企画書をまとめると、後で使われないシステムが出来上がるだけです。現場を知らない部署や外部コンサルタントが密室で作った企画書はとても危険なのです。

システム構築は莫大な費用がかかります。それが使われないなら、大金がドブに捨てられることになります。プロジェクトに関わった多くの方の努力も、徒労に終わってしまいます。

企画書は、システムを導入するためではなく、会社の経営課題を真に解決するために存在します。

貴社では、企画書に全力投球していますでしょうか?

「とりあえずシステム化…」で進めたりしていませんでしょうか?

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。