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システム予算は上振れする

2022

5/15

システム予算は上振れする

システム予算は必ず最初に聞かれる

「ざっくり、どれぐらいの予算になりそうですか?」

問い合わせをいただき、リモートで打ち合わせをしました。最近は、初顔合わせもリモートが多いです。これも時代の流れでしょうか。。

さて、システム化の予算は、問い合わせを受けたときに必ず出てくる質問です。そして、私が最も困る質問でもあります。まだ、この段階では詳しいことは何も聞いていないからです。対象業務とシステム範囲、課題、そもそもの目的など何も分かりません。

前提条件が不明の中で答えられたら、超能力者か詐欺師です(苦笑)

ここで安易に回答した数字は必ずぶれます(しかも上振れします)。さらにその数字は、必ず独り歩きします。そして数字がぶれると非難をあびるので、何も得しません。

頭の中には、予想金額はあるのですが、正直、答えたくないのです(苦笑)

しかし、答えないわけにもいきません。次に必ずこう言われます。

「予算を確保しないといけないんです」

「ですよね~」と話しは続いていきます。

最も信頼性の高い情報は何か

もちろん、時間をかければ数字は出せます。ベンダーに見積もりをとればいいからです。2週間もらえるならば、ベンダーに「RFI」を送って、標準価格と実績を聞けばいいだけです。

10社ぐらいから回答をもらえれば、その領域の「相場」はわかります。

しかし、相談に来られる皆さまは、なぜだか時間がありません(苦笑)。以前、相談に来られた方は「今日中に予算を出さないといけないんです」と言われました。

そこで田村は回答します。

「急ぎであれば、現行システムの総費用を予算上限にしてください」

たとえば、10年使っているシステムで、初期費用に5億円、二次開発に1億円、毎年の保守費用が2000万円であればその年数分、今までの「合計額」を予算とする、ということです。

この金額をそのまま使うわけではありません。新システムは基本的に「コストメリット」も出さないといけません。そのため、今よりもコスト削減をするのは「前提条件」ともいえます。

基本的に、費用は「現行以上」にはなりません。なぜなら、パッケージやフレームワーク、API、各種ツール、クラウドサービスなどの「既製品」を安く調達できるからです。

既製品を「流用」すればするほど、金額は抑えられます。

場合によっては「スクラッチ」から「パッケージ」に切り替えて、半額以下になることもあります。ちょっとインターネットで調べてみると、かなり安くなりそうな感覚があります。

しかし、この時点では楽観的に「狸の皮算用」は危険です。

理由は2つあります。

1つ目は、どこまで「流用」できるかが不確実なためです。もし、全てが流用できなかった場合は、「スクラッチ開発」や「大幅なカスタマイズ」が発生し、現行システムの費用に近づくでしょう。

つまり、パッケージが視野に入っていたとしても、いったんスクラッチベースで予算は見ておいたほうがいい、ということです。

2つ目は、プロジェクトは進行していくにつれて「新たな事実」が判明するからです。最初の時点で考慮できていなかったことに、追加費用がかかるのです。

ベンダーに提示漏れの機能、外部接続で相手側のシステム改修費用、思ったよりパッケージが使えなかった場合の改修費用、など必ず後から出てきます。

また、システムはリリース後の「保守」にもお金はかかります。そもそも「システムは一度作ったらもうお金はかからない」という考えが間違えています。システムを維持していくには、絶対にお金はかかるのです。

経験上、初期に見えていた金額は、最終的に2倍、3倍になります。我々はその時点では「全て」が見えていないからです。

予算は基本的に上振れする

予算というのは、必ず上振れします。

もし、パッケージで劇的なコストダウンを目論んでいる場合は、一度立ち止まって、計算しなおした方がいいです。経営陣が飛びつき、大きな期待のもとにプロジェクトは立ち上がります。その後に必ず訪れる「追加費用」は言い出しにくくなります。それも一度で済めばまだマシですが、たいていは2回、3回と続きます。

この「追加費用」で痛い目にあってきたのが「現行システム」です。現行システムがまさに、初期の考慮漏れに対して、追加費用を払ってきました。

だからこそ、そのトータル金額は、そこまで間違ってはいないのです。

もちろん、この上限を使い切ってはいけません。結果的にその半分で済むのなら、それを称賛すべきでしょう。もし、予算が余ったなら、それはもっと前向きな用途に振り向けることができます。こちらを目指すべきです。

その上で、しっかりと期間をとって金額を精緻化していきます。あくまでも現行費用は「超概算」です。それを軸にベンダーに見積もりをとっていきます。RFIで「相場」を知り、RFPで「最終金額」を取得していく流れとなります。

貴社のIT部門、情シス、情報システム部門は、予算を楽観的に見積もっていますか?それとも悲観的に見積もっていますか?

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情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。