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小さなベンダーの魅力とリスク

2022

5/31

小さなベンダーの魅力とリスク

ベンダー規模が小さいと不安になる

「このベンダーは小さすぎる。やめた方がいいのでは」

あるニッチな業界で、パッケージベンダーを選定しています。

RFI(情報提供依頼書)で11社に質問を投げ、回答をもらいました。

そこで論点となったのが「従業員数」でした。

回答を一覧に整理してみると、小さい方から3名、8名、20名、大きいところは8,000名、3,000名と、かなりバラツキがあります。

さすがに一桁は難しいと思っていたところ、先方から辞退の連絡がありました。

悩ましかったのが「20名」のベンダー。ただ、他の回答が魅力的だったので、いったん残しました。

その後、RFP → 提案 → プレゼンを経て、その「20名のベンダー」を採用します。決め手は「プロジェクトマネージャー」でした。

このベンダーが小規模という「リスク」を抱えたプロジェクト。結果はどうなったのでしょうか?

小規模ベンダーのリスクと魅力

従業員数が少なすぎるのは、明らかに「ノックアウトファクター」です。

いくら他でポイントを稼いでも、カウンターパンチ一発でノックアウトされてしまいます。

では、ベンダーの人数は「何名」ならOKなのでしょうか?

これには明確な線引きはありません。

システムの規模、対象業務の複雑度、パッケージとのFit率、予算、納期などで、その境界線は変動します。

例えば、数億円の規模だとベンダー数十名は厳しいですが、数千万円なら可能性は十分にあります。

そもそも、小さなベンダーの「リスク」とは何でしょうか?

① 遅延しやすい
少人数のため、一人の離脱がスケジュールの遅延を招きます。なぜなら、人が潤沢ではないので、簡単に補充できないからです。

日常的なリスクとしては、病欠、退職などが挙げられます。その都度、遅れが発生してしまいます。

また、小さなベンダーは他の現場を掛け持ちしているため、他の現場が炎上すれば、そちらに時間をとられてしまいます。わりと多く発生します。

② マネジメントが劣後する
小さなベンダーでは、大抵が「プレイングマネージャー」です。自ら手も動かせるので、PMはマネジメントしつつ開発も行っています。

つまり開発が優先され、マネジメントのための時間が後回しになりがちです。

そのため、出てくる進捗資料は簡素なものが多かったり、更新漏れも多かったりと、不安になります。

③ PMがボトルネックになりやすい
PMはプレイングマネージャーなため、ユーザーに頼られます。常に打ち合わせに呼ばれ、終日時間が奪われます。

その結果、ベンダー内部でPMの時間が確保できません。仕様の整合性確認やレビューなどが遅れていきます。ユーザーから投げた質問や課題対応も後回しになっていきます。

では、逆に小さなベンダーの「魅力」とは何でしょうか?

④ 人材レベルが相対的に高い
小さなベンダーでは、常に総力戦であり、一人でも穴を作ってしまうとプロジェクトが傾いてしまいます。そのため、各メンバーの守備範囲が広く、経験値も豊富です。

その会社を切り盛りする「エース人材」が必ず複数名アサインされます。

それはPMアサインで顕著に表れます。大規模ベンダーだと、ハズレ人材を引いてしまう確率は高くなりますが、小さいと常にエースがPMを張ります。プレイングマネージャーで、自身も手を動かせます。

プレイングマネージャーは何が素晴らしいかというと、業務とシステムの両方でユーザーと話しができること。業務課題を具体的なシステム機能で提案してくれます。

脇で支える人材も、他社経験が豊富な、手を動かせる優秀な方ばかりです。

⑤ 変な追加請求がない
私の経験則ですが「追加請求」がほぼありません。走りながら、柔軟に対応してくれます。

組織的に確立された「金額ノルマ」が優先ではありません。金額交渉を担う営業専任者もいません。常にユーザーの立場で「良いものをつくる」という情熱と使命が優先されているように感じます。

大手のベンダーと違い、小さなベンダーは、目の前のプロジェクトごとに勝負しています。その成否が会社の存続にかかわるからでしょう。その圧倒的な「当事者意識」がユーザーには頼もしく映るのです。

小さなベンダーのリスクを把握した上で、魅力を引き出すようなアプローチができれば、大きな選択肢となるのです。

情シスとしてのリスクテイク

冒頭のプロジェクトですが、実に4か月の「遅延」が発生しました。。。

コロナ禍でもあったため、感染者・濃厚接触者も合わせると、多くの離脱がありました。また、他社でのトラブル対応でPMの動きが鈍くなった時期もありました。

それは、そのまま遅延に直結してしまいます。。

それでも、無事にリリースできました。

受入テストで発覚した「仕様変更」も、柔軟に対応してくれました。

追加費用は発生していません。「こちらの聞き方が悪かった」「誤解を招く書き方が悪かった」と言われました。

これが大手だったら・・・、ぞっとしますね(苦笑)

今回の結果にユーザーも満足しています。何より「ユーザー側の立場」で常に考えてもらえたところが信頼につながりました。

また、プロジェクト管理を丸投げすることがなくなりました。自分たちで主体的に進捗を管理し、課題を管理するようになりました。

小さなベンダーを採用するのはリスクがあります。一方で大きなリターンもあるということです。

貴社のIT部門、情報システム部門では、ベンダー選定において「リスクテイク」していますでしょうか?

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情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。