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ベンダー選定のノウハウはどこに溜めるべきか

2022

6/15

ベンダー選定のノウハウはどこに溜めるべきか

その相談者はどの部署の人か

「ベンダー選定のノウハウがないのでご支援いただきたい」
問い合わせをいただき、その企業に訪問しました。

販売管理システムの再構築ということで、業務の独自性が高いとのこと。そのため「パッケージ導入」で進めるのか「スクラッチ開発」の方がよいのか、悩んでいるようです。

基幹システムの中でも「販売管理システム」は、この手の悩みは尽きることはありません。どの企業でも悩ましい課題です。業務と密接しており、独自性と標準化が混在していているからです。

まずは「パッケージシステム」を探してみて、なければ「スクラッチ開発」と王道で進めるしかありません。

さて、気になったことが1つあります。

先方の出席者は5名でした。「事業部門」が3名、「営業部門」が2名です。

「情シス」の方がいません。そのことを聞いてみました。

「あ~、ウチの情シスはインフラ専門なので、ここには出てこないですね~」

最近、このパターンは多いと感じます。

ノウハウを溜めるべき部署は1つしかない

基幹システムの導入において、「ベンダー選定」はとても重要です。

プロジェクトは、上流がにごれば、下流はもっとにごります。

最初の工程で、ダメなベンダーやパッケージを選んでしまうと、その後にどんなにがんばっても取り返すことはできません。「機能不足のパッケージ」や「実力不足のベンダー」を選んでいる時点で、手遅れなのです。失敗しない大前提が「正しいベンダー」を選ぶことです。

このベンダー選定には「ノウハウ」が必要です。

「RFI」や「RFP」を駆使し、ベンダーの提案を「スコアリング」し、1社を選び抜くプロセスです。経験がないと、ハードルは高いと言えるでしょう。そのため、最初の1回は私のようなコンサルタントが手伝うことになります。

一方で、このベンダー選定のノウハウには「再現性」があります。そこまで難しくはありません。一度経験したら、次は自力で回すことができます。

このノウハウは、どこに溜めるべきでしょうか?

「情シス」です。

なぜなら、ユーザー部門に溜めても、それを活用する機会がないからです。そのユーザー部門にとって、次のプロジェクト、大型のシステム導入は5年~10年ぐらい先の話です。ノウハウが飼い殺しとなり、非常にもったいないといえます。

一方で、情シスは、システム導入に毎回関わることができます。

情シスがノウハウをもって、ユーザー部門に寄り添いながら、毎回ベンダー選定をリードすることができます。経験を積むことで、そのノウハウはより一層、洗練されていきます。高いレベルでユーザー部門を手伝えるようになります。

その結果、情シスは多くのユーザー部門に感謝されます。充実感とやりがいが得られます。より一層、会社の中枢で貢献できるようになり、好循環が生まれます。

まさに、情シスが会社の「成長エンジン」となっていきます。

情シスでノウハウを溜め、さらに磨いていく

冒頭の案件ですが、情シスの方を1名入れていただきました。

30代の実力派です。PMOとして、私と一緒にプロジェクトを進めました。

グランドデザインから行ったため、5か月かかりましたが、無事にベンダー選定が終わります。「最高の1社」が見つかりました。提案内容も価格も申し分なく、まさにこの会社のために存在するようなベンダーです。

今回の活動は、すべて「ドキュメント」でしっかりと残しました。次のプロジェクトでも流用できます。

今後、その情シスメンバーは、他のシステム導入にも入る予定だそうです。今回のノウハウをさらに昇華させ、効果的に進めてくれるはずです。

貴社のIT部門・情報システム部門は、ベンダー選定のノウハウを確立していますか?そして、毎回、プロジェクトをリードしていますでしょうか?

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。