情報システム部門・IT部門が強くなるためのプラットフォーム

攻めの情シス研究所

情シスにノウハウを。
情シスが会社を強くします。

DX時代に内製・外注をどう考えていくか?

2022

8/16

DX時代に内製・外注をどう考えていくか?

内製化は重要なテーマ

「内製化に向けてエンジニアを採用したいが、募集要件をどうすればいいか?」

ある情シス部長に相談を受けました。確かに今は内製化がトレンドになっています。ビジネス雑誌をみると、CIOがインタビューで「内製に舵を切った」と答えています。

そこで逆に「内製で何を作るんですか?」と聞いてみました。

「そこを含めて相談したい」

ですよね(苦笑)。DXにどの企業も取り組む時代。内製するためのIT人材育成・確保も重要なテーマとなっています。

どのように内製化を考え、またベンダーと付き合っていけばいいのでしょうか?

領域により内製と外注を使い分ける

内製を考える上では、システムの領域を3つに区切ってみると分かりやすくなります。なぜなら、システムの領域により、内製化との相性は変わってくるからです。

①基幹系システム(SoR:System of Record)

ERPや業務パッケージシステムを導入する場合は、そのパッケージを持っているベンダーに「外注」するのが最適です。わざわざ内製でスクラッチ開発して、費用と時間を大幅に使うよりも、既製品を導入することでショートカットできるからです。

また、スクラッチ開発であっても、外注が基本となります。基幹業務は規模が大きく、比較的要件も固めやすいため「ウォーターフォール開発」が向いています。その場合、開発部分は「一括請負契約」にすることで、システムの納品が約束されます。これがユーザーにとっては非常に利点です。

ただし、そのシステムが「ローコード・ノーコード」で作られているなら、構築後の保守を内製で巻き取ることは可能です。その場合「何かあったときのために最低限の外注保守は継続しつつ、メインの保守を内製化する」というのがリスクを抑えるためには良いかもしれません。
 

②サービス系システム(SoE:System of Engagement)

顧客に直接サービスを提供するシステム、あるいは間接的にサービスに繋がるシステムや現場の生産性に密接に関わるシステムの場合、要件がカチッと決まっているわけではありません。試行錯誤しながらシステムを育てていくため「アジャイル開発」に向いています。

このアジャイル開発は「内製」と相性がいい。

社員の方が現場と密着してコミュニケーションをとり、開発していくことができるからです。また、同じ工数がかかるにしても、外注で人月単価を支払うよりも社員として抱えていた方が費用は抑えることができます。

しかし、アジャイルは最初が肝心。初速を出せるかどうかで、社内の評価が決まり、今後のプロジェクト継続や予算化も決まってきます。そのため、ある程度のフレームや母体となるシステムを作る「基礎工事」は、専門家であるベンダーに「外注」した方が確実です。

この領域は、ベンダーとの協働領域です。最初はベンダー比率を高くして、徐々に内製にシフトしていくことが現実的だと考えます。
 

③上記以外のツールの導入・活用・開発

上記以外で、次のような作業は「内製」に向いています。

・BIツールを導入し、レポートやダッシュボードを構築
・AIツールを導入し、分析や自動化、サービスへの応用機能を構築
・RPAで社員のルーティンワークの自動化
・エクセルマクロで、集計や計算、帳票出力の自動化

この領域の内製化は、従来から情シスで細々とやってきている企業が多いと思います。高度なプログラミング技術がなくても、実装しやすいからです。

また、この領域は初期構築の負担が大きいですが、その後は細く長く「保守」を伴います。修正も不定期に発生します。そのため、情シスが空いた時間で対応する方が都合もいいでしょう。ただし、特定のツールに依存しすぎると全体最適から遠ざかるので、注意は必要です。
 

このように、内製と外注はどの企業においてもどちらか一辺倒ではなく、その領域によって、また状況に応じて、バランスよく使い分けていくものです。

内製に力を入れている企業であっても、中を覗いてみると、定型業務にはパッケージシステムを入れていたり、専門領域には専門家に頼っていたりします。

外注をうまく使うことが、余力を生み出し、内製力を高めるといえます。

外注と内製がうまく共存できる組織を計画する

一方で、外注先のITベンダーも、DXに向けた生き残りに必死です。アジャイル開発にシフトし、ユーザーと協働を模索しています。

内製の場合は、社内で緊張感が緩んでペースが落ちたとしても、大きなペナルティはありません。しかし、外注で契約しているベンダーは更新を切られないよう、毎月緊張感をもって対応してくれます。

ベンダーは新しい技術を提案してくれたり、専門家として高いクオリティを持ち込んでくれたり、社内にはないメリットがあります。社外の空気に触れることで、内製部隊も刺激を受け、良い部分を見習うこともできるでしょう。

そう考えると、外注もそこまで悪くはありません。

要はバランスです。

外注と内製がうまく共存できる環境を作ること。IT人材確保・育成の中長期計画を明確にし、実行していくこと。その領域を明確にすること。すると、IT人材の募集要件もみえてきます。

そして、そこに対して「情シス」がイニシアティブをとること。それが重要です。

貴社のIT部門・情報システム部門は、内製化の計画にどうアプローチしていますでしょうか?

関連コラム

御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。