プレゼンで何を確認するのか?

プレゼンテーション(以降、プレゼン)とは、事前に提出してもらった提案書をベースに、来社してもらい(場合によってはオンライン会議にて)直接説明してもらうことです。

提案書という「紙面」では伝えることに限界があるため、直接説明してもらい、提案内容を補完してもらうためです。

ただし、このプレゼンは、提案書と同じく漠然と聞いていただけでは、得られる情報や気づきが少なく、もったいない時間を過ごしてしまいます。

プレゼンは、評価する観点を明確にしておくことで、効果的に確認を行うことができます。

プレゼンの観点は大きく5つあります。


① プロジェクトマネージャーの人となりを確認
② 実績の裏どり
③ 評価書を完成させるための確認
④ 実際にうごくシステムでのデモ
⑤ プロジェクトメンバーの当事者意識の醸成

これらについて解説していきます。
 

プレゼンテーション5つの観点

ベンダーによるプレゼンテーションを聞く際には、事前に仮説をもった上で、その答え合わせをする姿勢で臨むのが効果的です。

その際のポイントとして、5つの観点が挙げられます。
 

① プロジェクトマネージャーの人となりを確認

提案書という「紙面」でもっとも確認できないものは何でしょうか?

それは「プロジェクトマネージャー」の情報です。

提案書には、名前と経歴は書かれてあります。しかし、経歴はいくらでも脚色できるともいえます。

担当したプロジェクトの数が多くても、役に立たないから「たらいまわし」にされたかもしれません。プロジェクトの役割も大げさに盛って、プロジェクトマネージャーではなく、担当者レベルの仕事しかしてこなかったかもしれません。今回はじめてプロジェクトマネージャーに昇格しただけなのに、直近もプロジェクトマネージャーをやったとウソをついているかもしれません。

つまり、採用面接と一緒です。一次選考は書面だとしても、二次選考からはかならず「対面」で行います。紙面では限界があるからです。

そこで、プレゼンにおいては、プロジェクト計画のパートはかならずプロジェクトマネージャーから説明してもらいます。

話す内容はさることながら、「話し方」や「表情」、「声の大きさ」にその人の「人間性」がにじみ出ます。説明のわかりやすさ、具体的な内容やエピソードに「経験値」が出てきます。質疑応答の心をこめた対応に「誠実さ」がみえてきます。場の仕切り具合や質問のさばき方に「進行能力」もわかります。

何より、一連のやりとりで、このプロジェクトマネージャーと一緒に仕事をした場面を「疑似体験」できます。

「この人と定例会をすると、こんな感じなのか」
「この人だったら任せられそう」
「いざという時に頼りになりそう」

といった、人としての相性、フィーリングも確認できます。

これらは、提案書ではまず確認できないことです。

プロジェクトマネージャーの顔がイメージできると、安心できます。

もっとも不足していた情報を埋めて、評価書を更新していきます。
 

② 実績の裏どり

提案書に書かれてある実績は、本当なのでしょうか?

もし、顧客名がイニシャルで伏せられていれば、大げさに盛っているかもしれませんし、架空の実績を書いているのかもしれません。

提案を評価するうえで「実績」は非常に重要です。実績は、そのベンダーの「信頼の証」だからです。そのため、提案書に書かれてある「実績の真偽」をプレゼンで確認していきます。

では、どう確認していけばいいのでしょうか?

実は簡単です。気になる実績を「根ほり葉ほり」聞いていけばいいのです。

コツは「具体的」に聞くということ。このプロジェクトの期間や開発費用、仕組みや業務内容、採用したアーキテクチャーなどを具体的に聞いてみます。

「大きな課題は何だったのか?」
「バグや遅延はなかったか?」
「成功要因は何だったのか?」

など、実体験にもとづくエピソードを確認してみます。

ここで、即答できれば、ある程度は本当のことだと信じることができます。相手の目をみて、自分事として答えているかで、当事者だったかどうかもわかります。

逆に、抽象的な回答に終始したり、細かい情報を即答できなかったりした場合は、危ないです。その実績は、その場にいない人のものかもしれません。またはウソかもしれません。

なお、実績は「会社としての実績」と「プロジェクトマネージャー自身の実績」の2つがあります。前者は営業担当者が答え、後者はプロジェクトマネージャーが答えることが多いでしょう。

どちらにしても、当事者として具体的に話しているかが、確認ポイントとなります。当事者でなければ、その実績をもたらした「ノウハウ」は期待できないからです。
 

③ 評価書を完成させるための確認

各ベンダーの提案書を「アップル to アップル」で比較・評価していると、記載内容や切り口の異なる箇所がたくさん出てきます。推測でそろえられる部分ならまだいいですが、記載が欠落していたり、内容が不十分だった場合には、確認が必要となります。

事前に準備した評価書のあやしい部分について、そこを更新するために質問を行います。事前の評価で「仮説」だった部分を、実際にベンダーに確認し「答え合わせ」をするためです。
 

④ 実際に動くシステムでのデモ

スクラッチ開発の場合は無理ですが、パッケージシステムの場合は実際に動かす所をデモンストレーション(以降、デモ)してもらいます。

提案書は「静止画」の確認しかできません。そのため、プレゼンでは、システムの「動画」を確認していきます。

止まっている画面と動いている画面では、印象はかなり異なってきます。

画面イメージだと普通に感じていても、実際にうごく画面をみると、えらいチープにみえたりします。グレー基調のクライアントアプリケーションだと、より一層、古臭くみえてしまいます。

逆にウェブベースのものは、洗練されているという印象や、キレイだけど制約が多いなどの気付きも得られたりします。

エンドユーザーにとっては、日常業務で使うため、操作性はかなり重要です。デモで実際の動く画面をみられたことで、安心も得られます。その画面を知った上でベンダー選定した結果の方が、納得性も高まります。

デモも、プレゼンならではの項目といえます。このデモを受けて、評価書の「操作性・UI」の項目を更新していきます。
 

⑤ プロジェクトメンバーの当事者意識の醸成

提案におけるほとんどの情報は、提案書に書かれているため、正直にいえば新しく得られる情報は多くありません。

一方で、プレゼンは「儀式」としての側面もあるといえます。儀式だからこそ、このプロセスをプロジェクトとして、うまく活用すべきです。

プロジェクト内では、各メンバーで温度差はあります。プロジェクト体制上でざっくりわけると、PM、PMO、各部門のメンバー、となりますが、メンバークラスは兼務であることがほとんどです。本業を抱えながら、プロジェクトもやっています。

単純ではありませんが、プロジェクトにさける時間が少ないほど、そのプロジェクトへの熱量も少なくなります。当事者意識が希薄になり、責任感のなさからタスクが後回しにされたりします。

そんな「疎遠」なメンバーの熱量を引き上げるには、どうすればよいでしょうか?

ベンダー選定という重要な「プロセス」に参加させること。

つまり、ベンダーの提案プレゼンに出席してもらうのです。

その後のベンダー選定で、そのメンバーの意見も聞きながら、一緒に決定までの「プロセス」をふんでいきます。プロジェクトの一員として「尊重」するということです。

そうすることで、そのメンバーにとってプロジェクトは「当事者」となり、ベンダー決定の責任の一端を負うことになります。そして自覚がめばえます。

もし稼働が低ければ、現場と調整して、もう少し時間を捻出してくれるかもしれません。もし、プロジェクトの途中でうまくいかなくなり、ベンダー選定の責任が問われることになっても、現場を説得して守ってくれるかもしれません。

そのためには、プレゼンに参加したメンバーには、気持ちよく質問させるべきです。

メンバーは提案書を隅々まで読んでおらず、提案書に書かれている内容を質問してしまうかもしれません。それによって、質疑応答の時間が長くなり、終了時間が遅れてしまうかもしれません。

しかし、それでもいいのです。

その質問はさえぎってはいけません。そのメンバーの質疑時間が長いほど、当事者になり、プロジェクトへの熱量に転換されるからです。

多くの質問や時間のかかるやりとりをしたという「事実」が重要なのです。

提案書に書かれてあったとしても、現場目線で掘り下げた質問なら、より具体的な回答を引き出せて有用な時間にもなります。

現場がどの点を気にしているかを、プロジェクト全体で共有することもできます。メンバーの疑問をベンダーがうまく回答できれば、そのベンダーへの納得性も高まります。

最近は、コロナの影響もあり、会議室でのリアル対面とリモート接続の「ハイブリッド開催」も多くなっています。業務都合やテレワークで、会議室にいけない人でも、リモートで参加しやすい環境が整っています。

ぜひ、プロジェクトメンバーは積極的に参加してもらい、プロジェクトの当事者や味方を増やすよう進めてほしいと思います。
 

プレゼンで仮埋めした部分の答え合わせをする

ベンダープレゼンでは、事前につくっておいた仮の評価書を見ながら、答え合わせをしていきます。

評価書項目で一番グレーなのが「プロジェクトマネージャー」と「実績」です。紙面から受け取った情報で「仮埋め」しておき、当日のプレゼンで「上書き」していきます。

その項目以外にも、評価書で仮埋めした部分、あやしい部分はたくさん出てくるはずです。そのような項目は、遠慮なく質問していきます。その回答で、評価をどんどんアップデートしていきます。

プレゼンは、評価書を80点から100点にするために欠かせない「プロセス」です。

そして、追加特典として、プロジェクトメンバーのモチベーションも上げられるとなれば、プレゼン開催の「意義」は大きいといえます。
 

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