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なぜ「総論賛成・各論反対」が起きるのか。そのとき情シスはどう動く?

2024

2/08

なぜ「総論賛成・各論反対」が起きるのか。そのとき情シスはどう動く?

「総論賛成・各論反対」の発生

「ウチは『総論賛成・各論反対』で大きな変革ができないんです」

ある現場の情シス部長から相談を受けました。

その会社はこれまで様々なプロジェクトをやってきましたが、大きな変革には至っていません。

最初の「方針策定」の時には特に反対もなく順調に進むそうです。ところが、いざ導入段階になると、現場から猛反発が起きるとのこと。

現場の各部署には、それぞれ声の大きな人がいて「変えたら困る!」と言い出し、結局は「現行踏襲」となるそうです。

この「総論賛成・各論反対」はどうして起きるのでしょうか?

また、情シスとしてどう対処していけばいいのでしょうか?

「総論賛成・各論反対」の原因

そもそもですが、「総論」は本当に「賛成」されたのでしょうか?

実は「面倒だから」と、現場はいったんスルーしているだけかもしれません。あるいは他人事として「自分は関係ない」と思っているかもしれません。社長が全体会議で1回説明しただけで、全員が賛成してくれたと思っているだけかもしれません。

さらにいえば、現場はその発信自体を知らないかもしれません。社内メールや掲示板の連絡だけで、周知が不十分なのかもしれません。

もし、そのような場合、現場は最終段階で初めて「自分ごと」としてとらえ、反対してくるのは当然です。

こうなる原因はどこにあるのでしょうか?

それは「トップダウン」が弱いからです。

トップダウンで「全社方針」をきちんと組織に浸透させていないからです。

強烈なリーダーシップをもって、何度も何度も伝えていたら、全員が当事者意識をもって考えるようになります。「どう反対するか?」ではなく、全社方針は「前提」となり、「どうすれば実現できるか?」に思考が変わっていきます。

そもそも、現場で反対が起きるということは、現場の部門長が「腹落ち」していないからです。納得していれば、現場の反乱は部門長が抑え込むはずです。

これは、経営トップと各部門長との「コミュニケーション」が不足しており、同じ当事者としての目線を共有できていないともいえます。

「総論賛成・各論反対」の共通点

私は今まで様々な現場を支援してきましたが、うまく行かない現場には共通点がありました。

それは、経営トップが「親会社から出向」してきた場合や「国や省庁から天下って」就任した場合に多く見受けられました。

外様なので「下から良く思われたい」「摩擦を起こしたくない」「自分の代では事件を起こさず平穏に過ごしたい」などの心理が働くのでしょう。

各論反対は、「保守的なトップ」の場合に起きるのです。

全社方針とは、言い方を変えると「経営判断」です。

各現場が、勝手に決めてよいものではありません。

経営トップが覚悟を持って「こっちの方向に行く!俺が責任をとる!だから進め!」と言えば、組織は動きます。

裏を返せば、鶴の一声のように影響力の強い「創業者がトップ」の会社では「総論賛成・各論反対」は起きないのです。その気配すら感じません。

(ちなみに、二代目、三代目と「創業家の子息」が引き継ぐ場合は、自分の色を出そうとするため、良くも悪くも変革は起きます。)

「総論賛成・各論反対」vs情シス

「なんだ、経営トップが悪いのか。じゃあ情シスは関係ない」

と思うかもしれません。でも、それだと「受け身の情シス」から脱却できません。

では「攻めの情シス」としては、どう動くべきでしょうか?

それは「引きこもりがちなトップ」を「担ぎ出す」しかありません。

プロジェクト体制図の一番上の「プロジェクトオーナー」を担ってもらい、常に表に立ってもらいます。定期的に報告・承認・相談できるように「ステアリングコミッティ」を設定し、強制的にスケジューリングします。

重要な局面で「トップダウン」が効くように、周囲を固め、「仕組み化」していくのです。

変革プロジェクトでは、このような情シスによる「トップマネジメント」が不可欠です。

もし、ここでトップが遠慮したり、辞退するようなら、残念ながら変革は諦めたほうがよいでしょう。

そうならないよう、全力でトップをサポートし、全社コミュニケーションの潤滑油となるのが「攻めの情シス」だと考えます。

不謹慎かもしれませんが、このような状況において、私は「情シスのプレゼンスを高めるチャンス!」だと思ってしまいます。

実はこのようなケース、珍しくありません。お膳立てをすれば、経営トップとしての自覚や責任感から、急に動き出すことはよくあります。今まで、ちょっと遠慮していただけなのかもしれません。

「総論賛成・各論反対」との決別

「全体が変わる手応えを感じてきました!」

冒頭の情シス部長は言いました。今までとは違い、経営トップと情シスの距離が縮まってきたとのこと。

幸いなことに、親会社から出向してきた経営トップは「自分の代で歴史を変える!」と息巻いているようです。

先日、この経営トップは、年始挨拶で「IT戦略」と「重点施策」を説明しました。「DXできないと生き残れない」と力説していたそうです。資料は、情シスが作ったものをアレンジしていました。

この会社の変革はまだ始まったばかりですが、年明け早々に良いスタートが切れました!

貴社の現場では「総論賛成・各論反対」が起きていますでしょうか?その場合、情報システム部門・IT部門はどのように動いていますでしょうか?

御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。