2024
3/28
新しい取り組みがうまくいかない
「どうもうまくいかなくて・・・」
ある現場では、情シス部長の肝いりで、今までまったく使ったことがない「ノーコード・ローコードツール」を導入しました。
その現場は、エクセル管理が横行していました。使う人によってエクセルがアレンジされており、人の数だけエクセル書式が存在します。
パッケージシステムの導入も考えましたが、エクセル書式のバリエーションの多さに対応できず、断念した経緯があります。
そこで、白羽の矢が立ったのが「ノーコード・ローコードツール」でした。現場で自由に画面を組み、エクセルの項目をWebに移植できれば、DXに繋がります。
まずはスモールスタートで導入し、エクセルの移植を試みました。ところが、エクセルの項目の多さや表形式のレイアウトがWeb画面に合わず、また組み込んでいる計算式もいくつか再現できません。
シンプルな書式だけは対応できましたが、大部分を占める複雑な書式には全く使えるレベルになりませんでした。現場ユーザーの酷評もあり、現時点では見通しが立ちません。
そのため、このまま進めることに限界を感じ「解約」を考えているとのこと。
しかしながら、自信満々に提案し、承認してもらった社長や事業部長への説明を考えると「気が滅入る」と表情が冴えません。
新しい技術の導入について、情シス部長はどのようなスタンスを取るべきでしょうか?
トーマス・エジソンの言葉
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」
トーマス・エジソンの言葉です。
これは、まさに情シスに向けられた名言だと私は考えます。
現在、新しいデジタル技術やサービスが続々とリリースされています。
AI、生成AI、ビッグデータ、IoT、VR、AR、ブロックチェーン、5G、デジタルツイン、サイバーセキュリティ(MFA、EDR、EPP、IDS、IPS、SIEM、DLP…)、各種クラウド(SaaS、PaaS、IaaS、IDaaS、iPaaS…)、スマートスピーカー…等々。
どれも魅力的で、新しいもの好きな情シスの血も騒ぎます(笑)
それが導入された後の「理想の姿」を夢見ます。
しかし、問題があります。
「それが自社に合うかどうか」
こればっかりは、使ってみないとわかりません。実験するしかありません。
では、どこで実験するのか?
情シスでしょう。
情シスに「Sandbox」は必要
当然、チャレンジには失敗がつきものです。
でも、失敗してもいいじゃないですか。
失敗についてウダウダ言っている外野は無視して、チャレンジし続けるスタンスが重要です。
下を向く必要はまったくありません。
掘った穴は潔く埋める。深く掘る前なら傷は浅いです。
その失敗は、検証や分析を行い、次につなげることで、貴重な「ノウハウ」となります。
技術が進化すれば、同じサービスも時間が経てば使えるようになるかもしれませんし、その試行錯誤は別の領域で応用できるかもしれません。
全社でダメージを負う前に、代わりに情シスで小さく失敗してあげる。
この「社内環境」を整えていることが重要です。
ある程度、実験の予算が確保できており、情シス部長の裁量で自由にメンバーをアサインし、取り組めること。
この余白としての「Sandbox(砂場)」を持っているからこそ、実験や試行錯誤を通じて主体性が身につき、「攻めの情シス」につながるのです。
逆に、まったく新技術に手を出さず、どこかの部署の依頼を待っているだけなら、「受け身の情シス」または「下請けの情シス」となるだけです。
我々はまだまだ
「次は生成AIの組み込みにチャレンジしたい」
情シス部長は前を向きました。
それでいいと思います。
新技術でアテが外れた場合は、エジソンの言葉を思い出しましょう。
気持ちが楽になり、勇気をもらえます。
エジソンの1万回の失敗に比べたら、我々はまだまだです(笑)
貴社のIT部門・情報システム部門は「Sandbox環境」が整っていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。