2023
7/05
予算に追われて・・・夏
「8月までに予算を決めないといけないのですが、どう考えればよいでしょうか?」
新しく情シスの部長に着任したAさんから相談を受けました。
10月から新しい年度を迎える企業は、夏までにバタバタと予算づくりに追われます。
私が支援する企業は、この時期に予算作成するケースが多く、私も同じくそのフォローに追われます(苦笑)
予算づくりは、単なる「数字あそび」ではありません。
IT戦略にもとづいた年間計画の上に作られます。
ITの全体を把握し、明細を積み上げていく大変な作業です。
その後、経理部門に数字を詰められ、経営層に効果を問われ、承認されるまでに長い道のりが待っています。
大きな金額となるため、全社的にも影響が大きく、責任も重大です。
IT予算は、どう考えていけばよいのでしょうか?
その無難なIT予算でよいのか
予算の方針は、大きくわけると「攻める」か「無難に守る」かです。
守るだけでも大変です。
サーバーやPC、スマホなど、次々とハードウェアは保守切れを迎えるため、それの入れ替え計画だけでも大変です。
その他にも、ベンダーとの保守費用や、SaaSの利用料も計算しないといけません。
派遣スタッフにかかる人件費も必要です。
これだけでも、かなり大きな金額となるため、さらに「攻め」の要素を入れるのは、躊躇してしまうかもしれません。
一方で、経営層から見れば、新しい提案もなく「現状維持」というのは、面白くありません。
なぜなら、経営戦略の中で「DX」は大きなテーマだからです。
新たなデジタル活用案もない単なる現状維持では、競合に置いていかれると不安に思う経営者は少なくないでしょう。
そのため、経営層は情シスに対して「やってみなはれ」とよく言います。
言われた方は「そんな簡単に言われても…」と苦笑いします。
やってみなはれ
しかし、今は時代が変わってきました。
「やってみなはれ」ができる環境が整ってきています。
IT予算で、ベンダーにスクラッチ開発を前提とした「大規模な見積もり」をとるケースは少なくなりました。
パッケージシステムのSaaSが既に存在するからです。
SaaSはすぐにでもトライアルが可能です。最少アカウントでスモールスタートができます。
クラウドは基本的に使っただけ課金されるので、アカウントが少なければ少額となり、承認も得られやすくなります。
まずは、スモールスタートで確認し、うまくいけば全社展開という流れが容易にできます。
予算としては、アカウント数の年間計画さえ立てれば、金額の見通しが立ちます。
今は「いかに大きな金額を確保するか」ではありません。
「いかに多くのチャレンジをするか」が情シスに求められているのではないでしょうか。
もちろん、「攻め」に投資するために、現在の「守り」を圧縮する努力も必要です。守りも聖域ではなく、変革の対象になります。
会社に新しい風を入れて、全社的な変革に持ち込めるか。
予算編成は、その大きなきっかけでチャンスだと考えます。
情シスを次のステージに導けるか
開発の伴わないシステムの導入は、かなり早いものです。
1年もあれば、相当のことができます。
「ITのありたい姿」をどこまで描ききるか。宣言できるか。
正解もなく確証もない中で、胆力が求められます。
しかし、私はそのチャレンジを応援します。
その挑戦的な計画を達成できれば、会社は高速で成長していけます。
そして、情シスの「影響力」も「ステータス」も高速で上がります。
情シスは、「経営」と「事業」を助けてこそです。
大きく感謝されれば、大きなやりがいがあり、モチベーションも上がります。
情シス全体で好循環に入れます。
情シス部長のスタンスが問われる
予算は、部長の姿勢が問われます。
「攻め」の気持ちを忘れてはいけないと思います。
そのチャレンジを意地でもやりきって、功績を上げ、もっと経営の中枢に入り込んで、CIOになってほしいのです。
貴社のIT部門・情報システムの部長は「攻めの予算」をつくっていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。