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クラウドサービスを組み合わせたグランドデザインの考え方(SaaS、PaaS、IaaS…)

2023

5/18

クラウドの選択肢が激増

「SaaSとかPaaSとかIaaSとか、どう考えればいいのか…」

ある経営者から質問を受けました。

確かに「○○○ as a Service」という言葉が増えました。

どれも「クラウドサービス」という点では、同じです。

ただし、これらの違いをきちんと理解し、全体設計(グランドデザイン)に落とし込めるかどうかで、その企業のIT活用力は大きく変わってくると考えます。

このクラウドを前提としたグランドデザインには、検討の順番が重要です。

この順番を間違えると、全体最適化ができず、効果が限定的となってしまうからです。

どのような順番で考えていけば良いのでしょうか?

クラウドの選択肢と検討順

① SaaS(Software as a Service)のERPパッケージ

選定は、大きなものから順に検討するのが鉄則です。その代表的なものがERPパッケージ。中途半端に「会計」や「経費精算」などの個別パッケージを入れた後にERPを入れようとすると、重複や競合が発生します。現場の猛反発を受け、導入が進まなくなるだけです。
ERPのような統合パッケージは、まっさらな更地に巨大な複合施設を建てるようなもの。選択肢として検討できるのは、新築が建っていない最初だけです。

② SaaS(Software as a Service)の個別パッケージ

ERPは適用できないケースが多いので、ほとんどの企業では個別パッケージの組み合わせを検討していくことになります。
利点は、業務機能ごとに自社に最適なサービスを選べることです。重視したいのは「システム連携機能」です。クラウドサービス間で、マスタデータやトランザクションデータをAPI連携できること。
また、SSO(シングル・サインオン)に対応しているかどうかも、重要な評価項目となります。

③ PaaS(Platform as a Service)

自社に合うERPや個別パッケージがない場合、あるいはパッケージを入れ尽くした後に残った領域については、いよいよ「システム開発」の選択肢を検討します。ただし、ゴリゴリのプログラミング開発だと費用と期間が大幅にかかってしまいます。
そこで検討したいのが、クラウド上で提供される「ノーコード開発」や「ローコード開発」です。すでに存在する標準部品を組み合わせ、画面操作で高速に開発ができます。プログラミング技術がなくても、ユーザー側で自社開発も可能です。現在、このPaaSを活用した「内製」の事例が増えてきています。

④ IaaS(Infrastructure as a Service)

パッケージがなく、かつ大きな領域で高品質が求められる場合、ベンダーに開発を依頼することになります。その場合は、クラウド基盤としてIaaSのサービスを指定して、そこに実装してもらいます。
昔と違って現在は、クラウド側にAPI部品が充実しているため、うまく組み合わせることで大幅に工数を圧縮することも期待できます。

⑤ DBaaS(Database as a Service)

PaaSやIaaSを検討する際に「DBだけはパッケージ」という選択肢もあります。DBaaSは、クラウド上で提供されるDBサービスです。DBの種類は「リレーショナル」だけでなく「NoSQL」も増えてきています。
例えば、入力画面はPaaSでノーコード開発し、DBaaSでデータを蓄積し、SaaSのBIで可視化する、などの組み合わせが考えられます。

⑥ iPaaS(Integration Platform as a Service)

複数のSaaSを導入した際に、それぞれがAPI連携できれば問題ありませんが、対応していないサービスも多くあります。その場合に選択肢となるのがiPaaSです。クラウド上でのAPI連携機能を豊富に備え、各クラウドを接続するサービスです。システム間連携として動作する「クラウドRPA」もiPaaSといえます。

⑦ iDaaS(ID as a Service)

SaaSの導入が増えてくると、ユーザーのパスワード管理の負担が増えていきます。全てのSaaSに多要素認証が対応しているわけでもないので、セキュリティ上の不安もあります。
そこで検討したいのがiDaaSです。クラウド上でシングル・サインオンのサービスを提供します。最初の入り口で多要素認証を設定すれば、全てのSaaSが多要素認証で守られることにもなり、セキュリティも高くなります。また、各SaaSのアクセス権も管理できるので、システム管理者の負担削減にもなります。
ある程度、クラウド化が進んだ際に検討したい選択肢です。

⑧ SaaS管理 as a Service

こちらもiDaaSと同様に、ある程度クラウド化が進んだ際の選択肢となります。数あるSaaSのアカウントを一元管理し、社員の所属や立場に応じて、アカウントの発行や削除を一括して行えます。社員の移動時の対応が楽になります。
また、ユーザーのSaaS利用状況や、クラウドの「課金状況」が可視化されるサービスもあります。
クラウドの全体最適化を考える上で、検討したところです。

なるべく作らない、組み合わせる

従来は、自社でオンプレサーバーを調達し、ネットワーク回線を敷き、自分たちで物理的にシステム全体を管理してきました。そのため、毎回が「一大プロジェクト」で膨大なリソースが投入されていました。

しかし、現在はクラウド側にすべてが揃っている状況です。

わざわざ自社で時間と費用をかけて構築していては、他社においていかれるだけです。

いかに開発を省略し、すでにあるものを組み合わせていくか。

それがスピードを生み、開発コストを抑止していきます。

そのためには各クラウドサービスの選択肢を把握し、グランドデザインでその順番をしっかりと計画することが重要です。

貴社では、クラウド時代に合わせたグランドデザインを行っていますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。