2025
5/31
本稼働に向けた大事な準備
新システムがいよいよ、本稼働を迎えたら「障害管理表」を準備しましょう。
現在は、クラウドサービスの「チケット管理システム」が便利です。私も、いくつかの支援先で利用しています。
一方、小規模なプロジェクトや関係者が少ない場合は、従来の「エクセル管理」で十分です。
このエクセル管理における、フォーマットのサンプルを紹介します。
なお、クラウドのスプレッドシートでも同様に使えます。
障害管理表(サンプル)
(障害管理表本体シート)
(※ 画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)
(パラメータシート例)
ポイント解説
● 全体フォーマット
ユーザーとベンダーの更新欄は明確に分けましょう。左と右に分けて色分けすることで、入力者が混乱せず、わかりやすくなります。
● ステータス
ステータスは常に最新化し、現在誰がボールを持っているかを明確にしましょう。「完了(対応不要)」というのは、再現しない場合や起票者の勘違い、要望の取り下げなどで、ベンダー側の対応不要でクローズさせる場合に選択します。なお、ステータスが「完了」「完了(対応不要)」になったら、行をグレーアウトし、クローズしていることを明確にします。
● 障害分類
障害分類は、ベンダーに書いてもらいます。【プログラムバグ、システム設定ミス、マスタデータ不備、移行データ不備、設計不備、要件定義漏れ、その他】の中から選んでもらいます。ここは正直に書いてもらいましょう。「犯人探しや責任追及が目的ではない」とベンダーに伝えてください。障害傾向を分析し、根本対応や品質改善を検討するためのものです。
● 対応状況
対応状況も、ベンダーに書いてもらいます。具体的にどのような対応をしたのか、詳細に書くようお願いしてください。「対応しました」だけだと、その後に何か不具合が発生した時、「二次障害」かどうかの切り分けが判断できなくなってしまいます。
● 回答者
ベンダー回答者は、常に担当者名を書いてもらいましょう。社名だけだと、当事者意識や責任が曖昧になります。
信頼の架け橋ツール
「本番障害」が発生すると、現場には大きなストレスがかかり、ときにユーザーの感情が高ぶってしまうことも珍しくありません。特に致命的な障害が発生した場合、現場には怒号が飛び交い、一気に関係が悪化するリスクもあります。
障害が多発し、日々さまざまな対応に追われていると、「やってもやっても終わらない」という心理的な圧迫感に現場は追い込まれてしまいがちです。
こうした状況でこそ、「障害管理表」の存在意義が際立ちます。障害管理表は、すべての障害の発生状況や対応の進捗を一覧で「見える化」することができます。現場が今どれだけ逼迫しているのか、何件残っているのかを誰もが一目で把握できます。
これにより、必要以上に構えることなく、現場全体の気持ちを落ち着かせる効果が生まれます。また、優先順位に沿った冷静な日程調整や、客観的で建設的なコミュニケーションが可能になります。
さらに、ベンダー側がどれだけ真摯に対応しているかが可視化されることで、ユーザーの不安も和らぎ、お互いが前に進んでいる実感を共有できるようになります。
こうした「見える化」は、障害対応の単なる効率化にとどまらず、運用フェーズにおいて最も大切な「信頼関係」を維持し、さらに深めていくための基盤となります。
障害管理表は、単なる記録や管理のための道具ではありません。トラブルが起きたときこそ、現場とベンダー双方が冷静さを取り戻し、前向きに建設的な対話を重ねていく必要があります。そのための、まさに「信頼の架け橋」となる重要なツールです。
必ず、障害は発生します。でも、すぐに立ち上がれば、傷は浅くてすみます!うまく立ち上がることで、信頼関係も深まります!
では、本番運用をがんばってください!!
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※ 弊社で公開しているサンプルについては、基本的に画像のみの提供とさせていただいております。ファイルデータのダウンロードを可能とすると、内容の吟味をせずにそのまま流用し、トラブルに発展する可能性があるためです。画像データから文字起こしを行う過程で、それぞれのプロジェクトの状況に合わせてアレンジしていただければ幸いです。