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「IT人材」と「デジタル人材」のどちらを使うべきか?

2026

2/24

「IT」と「デジタル」の表記揺れ

「こっちはIT人材、こっちはデジタル人材、統一性がないよね」

ある企業でDX戦略を策定しています。情シス部長と私で資料を整備し、社長と打ち合わせした際に、ご指摘を受けました。

DX戦略を練っていると、「IT人材」と「デジタル人材」という言葉が多く登場します。DX戦略には、人材育成や組織強化の文脈が必ず出てくるからです。

情シス部長は、文脈に合わせてなんとなく使い分けをしていました。しかし社長は、資料にざっと目を通して、その「表記揺れ」が気になったようです。

確かに、両者の言葉は似ています。同じニュアンスで使われることもあるでしょう。

はたして、DX戦略において、どちらを用いればよいのでしょうか?

IT人材とデジタル人材は「似て非なるもの」

結論を先に言えば、「両者は重なるが、同じではない」ということです。

ざっくり言えば、以下のようになります。
 

IT人材:ITそのものを扱う専門家

デジタル人材:デジタルを使って、ビジネスを変える人

 

そのため、戦略上は明確に使い分ける必要があります。

DX戦略のうち、「インフラ基盤整備」「システム開発」の文脈であれば『IT人材』となります。

具体的には、インフラ構築、プログラミング、ネットワーク、セキュリティ、運用・保守、クラウド設計などです。
そのため、主な所属は、情シス・IT部門、SIer・ベンダーとなります。

一方、「事業変革」「データ活用」の文脈であれば『デジタル人材』です。

具体的には、データ活用、AI活用、業務改革、デジタルマーケティング、ノーコード活用、プロダクト思考、ビジネス変革、顧客体験向上などです。

そのため、主な所属は、事業部門、DX推進室、経営企画など、非IT部門はすべてこちらに入ります。全社員の「リテラシー底上げ」や「育成・強化」の文脈であれば、デジタル人材の方になります。

この言葉の定義は、私のイメージではありません。実際に、経済産業省やIPA(情報処理推進機構)でも同様のことを定義しています。

IPAは、これまで「ITSS(ITスキル標準)」という、主にエンジニアの技術力を測る指標を出してきました。しかし2022年にこれを刷新し、DXに特化した「DSS(デジタルスキル標準)」を策定しました。

ここで定義されている「デジタル人材」は、「データやデジタルを活用して、ビジネスをどう変えるか」の価値創出に主眼を置く人材と書かれています。

やはり、IT人材とデジタル人材は、明確に別の定義なのです。


(※ 画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

情シスは「守り」だけの人材ではない

ただ、1点、私が強くこだわっている点があります。

「守りの情シス」ではない、ということです。

情シスは、守るだけではありません。AI技術などを駆使して事業変革をリードすれば、まごうことなき「攻めの人材」となります。

情シスには技術力があります。インフラ基盤という「守り」は、情シスにしかできません。だからといって、情シスは「攻め」ができない、というわけではないのです。

むしろ、強固な守りを押さえた上で、情シスが攻めを兼務すれば、まさに「鬼に金棒」です。

これは、情シスのモチベーションにも大きく関わります。

もし社内で「情シスは守り」というニュアンスで語られているのであれば、それはすぐに表現を変えた方がいいでしょう。

あえて統一しない

「なるほど、逆に統一しちゃダメなのか」

社長は腹落ちした様子で、改めて資料を見入っています。情シス部長は「我が意を得たり」という表情をしておりました(笑)。

DX戦略においては、文脈に応じて、この2つの言葉を明確に使い分けましょう。

貴社のDX戦略には、「デジタル人材」と「IT人材」のどちらが登場していますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。