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経営層がプロジェクト状況を的確に把握する方法とは?

2018

7/19

経営層がハンドリングできなかったプロジェクト

「毎回、問題ないと報告を受けていたのですが…」

ある企業のIT部門の部長から相談を受けました。プロジェクトは後半に突入しており、いろいろな問題が出ているとのこと。

・スケジュールは6か月以上の遅れ
・連携部署の回答がなく仕様が決まっていない部分がある
・請求書のレイアウト変更で取引先からクレームがきている
・追加費用が必要な仕様変更はすべてストップしている
・仕様変更が行われないため、現場からクレームが出ている
・マスターをどの部署で管理するか決まっていない

相談されてきたIT部長は、この状況を直前まで把握できていませんでした。他の役員から「どうなっているんだ!」と苦情が来たため、慌てて確認したところ、上記の問題が噴出しました。

私は「ステアリングコミッティ」の報告資料を確認してみました。パワーポイントの大きなフォントで、要点だけが箇条書きされています。そこには「都合の良い報告」だけが書かれており、問題には触れられていません。また、最近は時間がないとの理由で開催がずっと延期になっていました。

ステアリングコミッティの大切なポイントとは

プロジェクトオーナーやその他役員の方がプロジェクト状況を把握する場、それが「ステアリングコミッティ」です。現場によっては「ステコミ」や「SC(エスシー)」など略して呼ばれることもあります。

このステアリングコミッティの存在意義は、「役員クラス」のプロジェクト介入にあります。プロジェクトマネージャーでは対応できない上位の問題を解決するための場なのです。

・部門間(グループ会社間)の対立への介入
・取引先やベンダーと合意を得られない課題への介入
・追加費用に対しての全社的な判断
・納期と品質のどちらを優先するかの判断
・現場への協力要請

プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、このステアリングコミッティの重要性は増していきます。

では、このステアリングコミッティを適切に運用するにはどうすればよいでしょうか?

ステアリングコミッティの「書式」と「タイミング」を定めることです。

「書式」とは、報告資料のフォーマットのことです。毎回、都合のよい報告だけにならないよう、指定した項目での報告を義務付けます。

<書式例>
・スケジュール予実
・コスト予実
・リスク報告
・承認依頼事項
・その他トピック
・次回の報告内容と報告日

プロジェクトマネージャーも、書式が決まっている方が負担は軽くなります。毎回、資料の中身だけを書き換えれば済むからです。

また「タイミング」も、ステアリングコミッティではとても重要な要素です。書式を指定しても、報告を受ける機会がなければ意味が無いからです。

どのプロジェクトにおいても、プロジェクトマネージャーは忙しくなるものです。プロジェクトマネージャーに開催時期を決めさせると、目の前の緊急事項を優先しがちになります。放置するとステアリングコミッティはどんどん延期され、最後にはキャンセルされてしまいます。

そうならないための方法は、プロジェクト計画書であらかじめ開催タイミングを定義することです。

ここで注意したいのは「必要に応じて都度開催」など曖昧な定義を許容しないことです。「毎月第三水曜日の15:00-16:00」とか「各工程終了のタイミング(詳細は別紙)」など具体的に定義します。

そしてこの予定を、事前に各参加者のスケジューラーに登録します。特に役員クラスは直前に会議予定を入れにくいため、かなり前から予定を押さえておくのです。

こうなると、プロジェクトマネージャーも延期できなくなります。次の開催までに、タスクをコミットしようとする意識が強くなります。これが、プロジェクトとして「強力な統制の仕組み」となっていきます。

全社的なプロジェクト統制をきかせる

経営層がプロジェクト状況を把握できない直接の原因は、プロジェクトマネージャーの報告不足です。一方で、別の視点から見ると、経営層の関与不足ともいえます。

プロジェクトマネージャーの実力に依存せず、経営層がプロジェクトをハンドリングするためには、ステアリングコミッティの運用ルールを明確に定めることです。経営層として確認したい項目を固定化し、その報告の定期開催を義務付ける必要があります。

プロジェクトで統制をきかせる最上位の仕組みが「ステアリングコミッティ」となります。

御社では、ステアリングコミッティの「書式」と「タイミング」を明確に定めていますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。