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情シス社員が忙殺されているのは情シス部長の責任

2023

2/22

ヘルプデスクあるある

「時間がとれません」

ある企業で、IT戦略を立てました。来期には大きなプロジェクトが2本立ち上がる予定です。

しかし、大きな問題がありました。

情シスが忙しすぎて「PMO」として参画できる状況ではないのです。

連日のように遅くまで残業しており、その上でプロジェクトを掛け持ちするのは、誰が見ても厳しいと感じました。

情シスの工数を調査してみると、その半分以上が「問い合わせ対応」に費やされていました。

そこで、情シス部長は、ヘルプデスクのチームリーダーに改善を指示しました。

1件あたりの問い合わせに対して「効率的に対処して対応時間をもっと短くするように」「チームみんなで考えるように」とのこと。

その後、1か月が経ち、状況を確認してみました。

「改善しようとしていますが、なかなか忙しくて…」

さらに1か月後に聞いてみました。

「目の前の対応が優先なので、ゆっくり対策を練る時間がなくて…」

まったく進展のない状況に、情シス部長はいらだちを隠しきれません。

より強い口調で改善命令を出すのでした。

しかし、その後もまったく改善する気配がみえません。

どうすれば改善するのでしょうか?

改善が進まない根本原因

ヘルプデスクをやったことのある人ならわかると思います。

問い合わせをキレイに解決できたときの快感はたまりません。

多くの件数をさばけた時には、大きな達成感に包まれます。

社内の人脈も広がります。とてもエライ人とも親しくなれます。

夜遅くに疲れていても、ユーザーから直接感謝の言葉をもらうと「明日もがんばろう!」と活力がわいてきます。

困難な問題を解決したら、ヒーロー扱いしてもらえます。

つまり・・・、楽しいので、ずっとこれを続けていたいのです。

この当事者に対して、改善指示を出したらどうなるでしょうか?

改善するフリをして、スルーするだけです。

だから進まないのです。

では、没頭したヘルプデスクのメンバーが悪いのでしょうか?

そうではありません。

メンバーは、目の前のユーザーのお困りごとを解決しようと、必死にがんばっています。

悪いのは、情シス部長です。

情シス部長が、ヘルプデスクの問題を現場に「丸投げ」しているから、何も解決しないのです。

下流ではなく上流にアプローチする

問い合わせ対応に忙殺される状況は、どうすれば解決するのでしょうか?

それは「下流」ではなく「上流」に目を向けることです。

・そもそもなぜ件数が多いのか?
・どの分野が最も多いのか?
・どうすれば全体件数を減らせるのか?

これは情シス部長が自ら首を突っ込まないと、解決しません。

問い合わせの傾向を把握し、多いものから対策を練っていくしかありません。

自ら把握し、自ら改善を考え、関係者と対話していく必要があります。

・不具合の多い機種を変更する
・システムを改修する
・マニュアルやFAQを充実させる
・ユーザー教育等でリテラシーを向上させる
・注意喚起やアナウンスを強化する

本当にエンドユーザーのためを思うなら、わざわざ情シスに問い合わせする「手間」をかけさせるのではなく、未然に問題なくコトを終えられることを真剣に考えるべきです。

これは、業務フロー全体の視座が必要であり、俯瞰できる情シス部長が介入すべき問題といえます。

下流の対応は、活躍が目に見えて分かりやすく、存在感が出せます。

一方で、上流の対応は地味であり、未然に防いだ効果は説明しにくいものです。

しかし、下流に埋もれず、上流に目を向け、俯瞰して考えることができるのは情シス部長しかいないのです。

さらに、情シス部長は、問い合わせが予防され、改善された後の「世界観」を部内に示すべきです。

情シスとして目指すべき方向性、あるべき役割をきちんと説明します。

自分の仕事がなくなってしまうという不安を抱かせないように、新しい仕事、魅力的な仕事をお願いしたいと最初に伝えるべきです。

メンバーの将来に寄り添い、スキルアップを一緒に考えつつ、コア業務に導いていくのも重要な責務です。

情シスという組織を設計するのは、情シス部長の仕事だからです。

情シス部長の介入こそが違いを生み出す

その後、この情シス部長は現場に介入しました。

自らも電話をとり、対応する中で解決策を打ち出していきます。

問い合わせ件数は、ピーク時から半分に減りました。まだまだ、減らしていくそうです。

今は情シス2名が、PMOとしてプロジェクトを頼もしく回しています。

そして、情シス部長の意識は、完全に「上流」に向かいました。

次のターゲットは、「そもそもなぜ、マクロやRPAの対応件数が多くて、忙しくなっているのか?」だそうです。

貴社のIT部門・情報システム部門は、しかるべき人が上流に目を向けていますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。