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SFA導入を「基幹システムと同じ進め方」でやると失敗する理由

2026

3/26

同じ進め方でよいか?

「今度、SFA導入プロジェクトを立ち上げるのですが、基幹システムと同じような進め方でよいですか?」

A社の情シスメンバーであるJさんから相談を受けました。

A社はBtoBの製造業です。DX戦略の第一弾として、昨年ついに「基幹システム」の再構築が完了しました。ようやく周辺システムの見直しに着手できることになり、第二弾として選ばれたのが「営業支援システム(SFA)」の導入です。

現在、A社の営業管理はすべて「Excel」で行われています。

基幹システム再構築でPMOを務めたJさんは、今回のSFA導入でもPMOを担当することになりました。

「いよいよ本格的にDXを進められる!」

と非常にモチベーションが高まっています。

これからプロジェクト計画書を作成する、というタイミングでのご相談。

「全く違う進め方になります」

と田村は答えました。

営業支援システムは、基幹システムとはプロジェクトの性質が根本的に異なります。

では、SFA導入を成功させるためには、何をポイントに進めればよいのでしょうか?

最大の敵は「慣れ親しんだExcel」

ある意味で、SFAの導入は基幹システムよりも難しいと言えます。

基幹システムは「請求」や「会計」など、業務プロセスに必須のシステムです。使わなければ売上も立たず、請求もできず、仕事が進みません。

つまり、システム利用に強力な「強制力」が働きます。

一方で、SFAはどうでしょうか。

極論を言えば、システムに入力しなくても現場の営業活動は回ってしまいます。これまで通り、慣れ親しんだExcelを使い続ければ、顧客管理も案件管理もできてしまうからです。

営業パーソンにとって、好きな項目だけを入力し、自分なりに小回りをきかせられるExcelは、最も自由度が高く、負担の少ないツールです。

わざわざ操作を覚え直し、新しいシステムに移行するメリットを感じていません。

現場にこの「慣れ親しんだExcel」を捨てさせるハードルは、想像以上に高いのです。

さらに、SFAはデータの可視化に優れている反面、現場には「上層部から監視されている」という心理的負担を生みます。

自由主義かつ実力主義の「一匹狼」が多い営業職にとって、これは歓迎できる変化ではありません。

とはいえ、現場も上層部との対立は望んでいません。するとどうなるか。

営業担当は表立った抵抗を避け、最低限の入力だけを行って「導入に協力しているふり」をします。

しかし裏では、こっそりとExcelでの管理が暗躍し続けます。

やがて「二重入力は面倒だ」となり、使い勝手の良いExcelが主役に戻り、せっかくの新システムはただの「オマケ入力」に成り下がります。

結果として、莫大なライセンス費用だけが毎月垂れ流される、効果の見えないIT投資に終わってしまうのです。

SFA導入を成功に導くプロジェクト体制

では、どうすればSFAを「使われるシステム」にできるのでしょうか。

そのためには、SFA導入の目的に立ち返る必要があります。

そもそも、何のためにSFAを入れるのでしょうか。

営業状況を「可視化」し、組織全体に共有することで、顧客対応の品質を底上げし、「顧客満足度」を向上させるためです。

また、顧客情報や営業ノウハウをシステムに蓄積し、「属人化」を解消するためです。担当者の退職や異動があっても、誰でも一定の品質で対応できる「仕組み」を作ることが真の目的です。

つまり、「顧客満足度向上」と「営業組織強化」という経営課題の解決であり、事業成長に直結する会社の最重要テーマなのです。

現場の都合だけを聞いていれば、最適解は「現状のExcel」になってしまいます。

だからこそ、SFA導入は「経営トップダウン」で進める必要があります。

その前提に立ち、以下のように「プロジェクト体制」を組んでいくことが重要です。

① プロジェクトマネージャー(PM):営業トップ

SFAから最も直接的な恩恵を受けるのは、営業状況を管理する営業トップ(営業部長など)です。PMには、この営業トップが就任すべきです。営業部長自らが当事者となり、配下のメンバーをどれだけ本気で巻き込めるかが勝負の分かれ目となります。

② プロジェクトリーダー・メンバー:営業現場

実務を担うリーダーやメンバーは、営業部門の現場担当者で構成します。彼らに当事者意識を持たせるためには、「過去の商談履歴がすぐ見れる」「スマホから日報入力して直帰できる」「フォローアップのリマインダーが自動化される」といった現場への「実利」を前面に出すことが不可欠です。
また、初期のシステム選定から関与させ、「自分たちが選んだシステム」という意識を持たせることが定着への近道です。

③ プロジェクト事務局(PMO):情シス

ここで忘れてはならないのが情シスです。情シスはシステム導入の専門家として、PMOを担います。会議運営、課題管理、ベンダー調整はもちろん、現場に寄り添う伴走役として立ち回ります。
何より重要なのは、情シスが客観的な立場で「ベンダー選定」を主導することです。RFIやRFPを駆使し、冷静にパッケージを比較検討します。
ここを営業部門に丸投げすると、ネットで検索したベンダー1社を「一本釣り」して決めてしまう危険性があります。

機能比較の前に見るべき「3つの選定基準」

基幹システムと異なり、SFA導入において「システム開発」はほとんど発生しません。成熟した領域であり、優秀な「パッケージ」が豊富に存在するからです。

そのため、開発が難航してプロジェクトが頓挫することはありません。

裏を返せば、SFAプロジェクトの難所は導入そのものではなく、導入前の「選定」と導入後の「定着」に集約されます。

中でも「選定」は極めて重要です。

システム開発がないということは、後から自社に合わせてシステムを大きく修正できないことを意味します。

BtoB向けのSFAパッケージであれば、顧客管理、案件管理、日報などの基本機能や、クラウド・スマホ対応といった要素に大きな差はありません。どのパッケージでも、必ず標準装備されているからです。

入力のしやすさ、BI(ダッシュボード)の柔軟性、そして近年注目されるAIによる予測・提案機能などは、たしかに重要な比較要素です。

しかし、自社の「現行のやり方(Excelの帳票など)」とパッケージ機能が完全一致することを目指してはいけません。

パッケージ機能は、多くの企業で使われ磨かれた「業界のベストプラクティス(標準)」だからです。

現行のやり方と違うのであれば、それは自社のプロセスが非効率な「ガラパゴス状態」に陥っているだけかもしれません。

パッケージへの適合率の低さは、自社業務の「のびしろ」と捉えるべきです。

では、細かい機能要求の前に、選定において本当に差がつく要素は何でしょうか。以下の3点にこだわるべきです。

① その業界での導入実績

最も重視すべきは「同業界での実績」です。業界に強いパッケージであれば、業界特有の要件であっても、すでに標準機能として搭載されています。
また、ベンダー担当者も業界の業務フローに明るく、「業界の勝ちパターン」を持ち込んでくれます。非効率な自社のやり方を、標準的で効率的なプロセスへとアップデートしてくれるのです。

② 周辺システムとの連携実績

販売管理システムや名刺管理、MAツールなどとの連携実績が豊富であれば、「カスタマイズゼロ」で導入できる可能性が高まります。手作業によるシステム間連携をなくせば、二重入力や転記ミスは完全に排除されます。将来のバージョンアップ時の保守懸念もなくなります。

③ 営業コンサルティングと定着支援

SFA導入失敗の最大の要因は「使われないシステムになる」ことです。カスタマイズを行わない以上、ベンダーに求めるべきは「開発力」ではなく「伴走支援力」です。
システムはあくまで道具です。重要なのはKPI(経営管理指標)の定義と運用。操作方法を教えるだけでなく、KPIの作り直しから、ダッシュボードを使った営業会議のファシリテーションまで踏み込んで指導できる「営業コンサルティング」の質が問われます。

SFAは「導入」ではなく「定着」がゴール

「なるほど、基幹システムとは全然違いますね……」

一連の説明を聞いた情シスのJさんは、腑に落ちた様子。

Jさんはその後、すぐに営業トップと掛け合い、SFA導入の本来の目的と体制づくりについて調整を開始しました。現場を巻き込んだ、力強いプロジェクト計画書が出来上がりそうです。

SFA導入は、システムを入れることがゴールではありません。

「営業DX」を実現すること。すなわち、現場の営業プロセスを変革し、新しい仕組みを「定着」させることがゴールです。

貴社のSFAは、営業の現場で本当に「定着」していますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。