2023
5/31
新しい役割のための増員
「あと3名ほど増やしたいんですけど、どう思いますか?」
ある情シス責任者に相談を受けました。
現在、情シスは10名で、各メンバーは多くの仕事を抱えています。
その上で、来期は新しい「本社直轄プロジェクト」を控えています。そのため、圧倒的に人手不足になることが予想されるとのこと。
そこで、現在の情シス10名が何をやっているのか、タスク分析をします。
そして、私は申し上げました。
「増やす前に減らしませんか?」
収納棚の法則
突然ですが、家の荷物を片付ける際の「収納棚」で考えてみたいと思います。
棚を1つ設置すれば、当然ながらその棚には「物」が埋まります。
もう1つ棚を増やせば、そこにも「物」が埋まります。
3つ、4つ、5つ…と棚を増やしても、必ず埋まります。
では、10個増やすとどうなるのでしょうか?
必要ないと思っていても、必ず何かしらで埋まってしまいます。
ここで問題なのは、10個まで増やした棚を見ながら「何個の棚が正解だったのか?」を考えることです。
正解はないのですが、物が埋まっている光景をみると「10個は必要だった」「むしろまだ不足しているんじゃないか」と考えてしまうことになります。
情シスの法則
これは、そのまま情シスの適正人数にも当てはまります。
仮に、今10名いるとしましょう。
すると、必ず10名とも忙しくなっています。どの人も抜けたら困る状況です。
人は与えられた役割の中で、自分の存在を正当化していきます。
どんな人も仕事を見つけ出し、取り組みます。その人のキャパシティがオーバーするまで、仕事は増え続けます。
タスクで満たされると、人は安心して、そのタスクに集中していきます。
PMO、運用・保守業務、ヘルプデスク、内製開発など、どんな役割であっても、その領域を深掘りしていけば、いくらでもタスクは作り出せてしまうからです。
良く言えば、ゆっくり時間をかけて丁寧にやることになります。悪く言えば、のんびりマイペースで生産性が落ちることになります。
そして、各メンバーはいつも忙しくなります。
その状況を見ながら「何名が適正か?」を考えると「やはり10名は必要」「むしろまだ不足している」となってしまうのです。
今を見ずに未来を見る
では、どうすればいいのでしょうか?
情シス責任者が最初に「必要な人数」を決めてしまうしかないと考えます。
情シスに必要な役割を定め、コアを定め、具体的な役割をイメージし、それぞれ何名必要かを定義するしかありません。
ポイントは「今」を見ずに「未来」を見て、定義することです。
そこには正解はありません。「どうありたいか?」しかありません。
ここで、仮に「減員」したらどうなるのでしょうか?
すると、各メンバーはそこに向けてタスクを最適化していきます。
優先順位の低いタスクが捨てられ、今まで丁寧にやっていた仕事も効率的に進めるようになります。
ユーザー部門や派遣スタッフ、外注業者にタスクを移譲して、積極的に任せるようになるかもしれません。
何名にしようが、その人数で最適化されます。
大抵は、家の収納棚と同じく「過剰」なのです。
現在の役割の棚は、もっと減らせるはずです。
そして、もっと別の物(役割)を置けるはずです。
そのためには、情シス責任者の「方針」が必要なのです。
棚が決まると収束していく
冒頭の情シス責任者は、なんと現状の役割を半分の5名でやると宣言しました。
この方は強権発動で、やるといったらやるタイプでした。
それから1年後、10名から7名で既存の役割は回せるようになりました。まだまだ、5名に向けて改革中とのこと。
「ウチは丁寧にやりすぎていたんですね」
捻出した3名分は、新しい本社プロジェクトを精力的に進めています。
貴社のIT部門/情報システム部門は、今の役割は何名が適正だと考えておりますでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。