2023
7/19
退職ショック
「信頼して任せていたのに…」
ある現場で、情シス部長が嘆きました。
PMOを任せていた情シスメンバーが突然、退職したとのこと。
よりによって、プロジェクトがこれから忙しくなる、という時にです。
全面的に信頼していたそうで、ショックを隠しきれません。
さらに、ここ1年で3人が辞めており、なかなか社員が定着しません。
たまたま運が悪かっただけなのでしょうか?
猫の手も借りたい部長
情シス部長のAさんは、超多忙です。
部員が少ないので「プレイングマネージャー」として、自身もプロジェクトを抱えています。
プロジェクトと並行して、日々の定例会や接客対応、各種申請の承認、メール処理など「部長ルーティン」にも忙殺されています。
とても全てをさばくことはできず、猫の手も借りたい状況です。
そのため優秀な人を「即戦力」として採用し、そのプロジェクトを「お任せ」していたのでした。
そのため、A部長は辞めたBさんと話す機会がほとんどとれず、お互いがそれぞれのタスクを進めることで精一杯でした。
以前は「1 on 1」でお互いのすり合わせをしていましたが、ここ半年はその時間もとれていません。
最近は、Bさんが一番最後まで残業することも多かったようです。
孤軍奮闘のメンバー
この状況をBさんの立場で考えてみます。
・大事な会議で上司に出席してもらえず孤軍奮闘
・社内調整で上司の支援が得られない
・自分が一番残業しているのに誰も協力してくれない
・山積みの課題を相談できず、フィードバックももらえない
・自分がプロジェクトにどれだけ貢献しているか理解してもらえない
この状況が半年以上つづけばどうなるのでしょうか?
「虚しさ」や「徒労感」から「割に合わない」と思ったのかもしれません。
「どんなに頑張っても会社に評価してもらえない」と思ってしまうと、モチベーションを保つのは難しくなります。
「手柄だけ上司が持っていくのでは?」と不信感が募ったのかもしれません。
本当は、そうでないことは知っています。
単純に時間がとれていないだけです。
ですが、きちんとコミュニケーションをとらなければ、「すれ違い」は日を追うごとに悪い方向に向います。
上司とのつながりが希薄になれば、会社への帰属意識はなくなります。
その結果、自分の人生を考え直し、意識が外に向いてしまうのかもしれません。
Bさんのように優秀な人ほど、全面的に任せられてしまうので、孤独を深めていくケースが多いと感じます。
「丸投げ」と「任せる」ことは違う
いくら心の中では信頼していたとしても、それは行動で表さなければ、それは「丸投げ」になります。
どんなに忙しくても放置せず、意識的に接点を持つことは大事です。
定期的に1 on 1の時間をつくったり、要所での会議に参加したりすること。
内容を理解できなくても、会議で発言できなくても、直接的に助けてあげられなくても、それはいいのです。
メンバーに関心を寄せ、話を聞き、勇姿を見守る。
それだけでメンバーの支えになります。
「頼られること」は、メンバーにとって苦痛ではありません。むしろやりがいになります。
ですが「上司の無関心」は耐え難いのです。
自分の頑張りを上司がきちんと理解し、努力を正当に評価してもらえるという「会社への信頼」がもてないと、モチベーションが萎えていきます。
情シス部長の立場として、人手不足でプレイングマネージャーをやっている中で、忙しいのはわかります。
しかし、その作業に没頭して、メンバーを放置してもいい立場ではありません。
ただでさえ、削れないタスクを抱える中で、メンバーとのタスクの優先順位を上げていくしかありません。
時間を捻出するために、従来の作業を手放さないといけないものも出てくるでしょう。
大変ですが、メンバーが急に辞めて、その人の全タスクを抱えてしまうよりは、遥かにマシです。
将来的に情シスの人数を拡張する際にも「丸投げ管理」のまま増やしてしまうと、全体が属人的となり、組織としてノウハウも残らず、破綻すると思います。
現場叩き上げの部長はどうしても「自分でやった方が早い」と多くのタスクを抱えがちです。
しかし、情シス部長として、意識的に仕事の「優先順位」を変えていかないといけないのです。
悪循環を断つ
A部長は今まで1回も出なかった会議に同席するようになりました。
疎遠なメンバーには、意識して話しかけるようにしました。
ただ、このペースで時間を作っていたら身が持たないので、A部長は自身のタスクの持ち方も少しずつ変えているようです。
部を変えたいなら、まず部長から変わるべきです。
A部長は、組織改革の一歩を踏み出しました。
貴社のIT部門・情報システム部門は、忙しすぎて部長とメンバーの関係が疎遠になってはいないでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。