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情シスの人材流出を防ぐ「情シス部長の求心力」

2023

12/01

ある情シスメンバーの退職連絡

「新しい現場でチャレンジしたくて…」

以前、ご支援した情シスのメンバーから久しぶりに連絡がありました。

退職するそうです。表向きは一般的な退職理由でしたが、もう少し突っ込んで聞いてみました。すると

「転職先の方が給料がよくて…」

これも一般的な理由です。さらに聞いてみると

「XX部長とは合わなくて…」

やはりそうだと思いました。

近年、IT部門・情報システム部門の業界は人材の流動性が激しくなっています。昔と違い、情シスも転職が当たり前。生え抜きで20年以上となると、もう「天然記念物」です(苦笑)

このような状況下で、情シス部長は人材流出を防ぐために何ができるのでしょうか?

中長期の対策

一般論として、人材流出を防ぐ王道は「給与体系の見直し」です。

近年のIT転職市場の高騰をふまえると、真剣に考えていかないといけないテーマだと考えます。

しかし、これを断行するには会社全体の給与制度に手を突っ込み、変えていかないといけません。今すぐは難しいでしょう。

次に「やりがいのある仕事を与える」も考えられます。

例えば、大きなプロジェクトを任せたり、新しい技術に関わらせたりすることです。その人のやりたい方向性に合わせてキャリアパスを充実させ、自己成長を実感してもらいます。

しかし、これも目の前のタスクのやりくりが必要で、中長期で考えていくテーマだと思います。

耳の痛い退職理由

一方で、私はもっと身近で大事なことがあると考えます。

それは「部長の求心力」です。

これまで情シスを辞める人にいろいろ話を聞いてきましたが、次のような愚痴を聞くことが多いです。

「自分は部長に大切にされていない」
「自分の意見に耳を傾けてくれない」
「いつもダメ出ししてマウントをとってくる」
「部長はすべて自分が正しいと思っている」
「周りをイエスマンで固めたいだけ」
「自分が頑張ったのに手柄だけもっていく」
「この部長の元では一生評価されない」
「将来、部長みたいにはなりたくない」

つまり、リスペクトされていない部長が上にいると、離職の大きな要因となっているようです。

情シス部長がリスペクトされる方法

では、どうすればいいのでしょうか?

① 部下をリスペクトする

とても基本的なことですが、ダメな情シス部長は、これができていないようにみえます。

情シスメンバーはみんなヤル気があり、他人にはない武器をもっていて、会社に貢献したいと思っている。

この前提に立てば、リスペクトが生まれるはずです。

リスペクトすれば、もっとメンバーのことを知りたくなり、意見を尊重し、状況を常に気にかけるようになります。
 

② 自分の手柄よりも部下の手柄を優先する

例えば、経営層への大事な説明の場があったとします。

私が過去に見てきたダメな情シス部長は、資料作成や実際の対応を頑張った部下のことには触れず、自らスポットライトを浴び続けていました。

逆に信頼される情シス部長は、部下にチャレンジさせ、自分は隣に座り、我慢してバックアップに回っていました。重要な会議にあえてメンバーを呼んで、社内の認知度を上げさせます。部下はやりがいを感じ、自信をつけ、次の案件ではさらに戦力化していきました。
 

③ 部下がいないところで、部下を褒める

例えば、部下がミスをして、他部署からクレームがあったとします。

ダメな情シス部長は、本人がいないところで、一緒にその部下をダメ出ししていました。その部下から案件を取り上げ、代わりに自分が対応し、自分の能力を誇示していました。

逆に、信頼される情シス部長は、本人がいないところで部下をフォローしていました。部下の立場を代弁し、良いところをアピールします。その場に部下を呼び、再度チャンスを与え、裏でフォローに回っていました。その結果、部下は他部署からの信頼を回復し、自信を取り戻します。

***

部下をリスペクトして好きになれば、もっと部下のために動きたいと思えます。「どうすればメンバーが得をするか?」を常に考えるようになります。

部下は活躍することで、周囲から信頼を得て、自信がついていきます。

すると、それをフォローしてくれた情シス部長に感謝し、リスペクトするのです。

辞める理由から、辞めない理由に変わっていきます。

そして、部下は部長を力強く支えるのです。

所属の誇り

「お金じゃない。○○部長のために自分はがんばる!」

ある現場では、情シス部長が凄まじくリスペクトされています(私も大変尊敬しています)。

いつも謙虚で、部下を持ち上げ、自分は大したことはやっていないと言います。その裏で、情シスのため、部下のために一人で戦っています。

他方、部下はいつも「部長のおかげ」と言っています。

その現場は、相互リスペクトの関係にあります。

その情シスに所属している「誇り」をチーム全体から感じます。だから、みんな辞める気配がないのでしょう。

様々な人がいるので、人材流出に万能な策はないと思います。ですが「情シス部長の求心力」は、優秀な人材をとどめる大きな武器だと考えます。

貴社のIT部門・情報システム部門の部門長は、自らの求心力で人材流出を防ぐことができていますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。