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大企業の情シス部長と中小企業の情シス部長は全く別の職種

2024

5/22

鳴り物入りの情シス部長

「もっと高給待遇しないとダメですか?」

ある中小企業の経営者から相談を受けました。

その会社では、情シス責任者が定年退職となりました。

情シスメンバーは5名いますが、まだ全体的に若く、責任者を担えるような後任はいません。

そこで、この経営者は、今後の情シス拡大・強化を見すえて、人材市場が高騰している中で「高給採用」を決断しました。

その結果、大手企業との競合の末、立派な経歴をもつ情シス部長を採用できました。前職で30名にもなる情シスを率いていた、歴戦の猛者だそうです。

鳴り物入りで入社して、6ヶ月が立ちました。

ところが、うまくいっていないようです。各部署の部長と対立し、お願いしているプロジェクトも進んでいません。

この新しい情シス部長は、なぜうまくいかないのでしょうか?

大企業の情シス部長の特徴

大きな企業の情シス部長は、その役割が特殊です。

組織が大きいゆえに、関連する部署や取引先、ベンダーなど、膨大な数の関係者との「調整」が日々のメインタスクとなります。

多くの人間が、情シス部長に承認を求め、協力を求め、判断を仰ごうとします。

日中のスケジュールは、会議で埋まります。キャンセルで空きが出ても、奪い合いとなり、すぐに埋まってしまいます。

そのため、情シス部長のスタンスは「受け身」となります。口を開けて待っていれば、次から次へと相談者が殺到し、そこを確実にさばくことに集中すればよいからです。

並行して、膨大なメールやチャットへの返信、承認手続きが溜まっています。

これら異常な量のタスクを発狂せずに、効率よくさばいていくスキルが、このクラスの情シス部長には求められます。

一方で、1つ1つの案件に細かく首を突っ込む時間はありません。

そのため、現場の細かな業務はわかりません。現場の担当者の名前も知りません。システムの詳細機能も把握していません。ITインフラを自ら手を動かして構築することもありません。

しかし、それでよいのです。組織として、役割を特化しているからです。

自ら手を動かす代わりに、周りを動かします。細かな問題は抽象化して、解決の大まかな方向性だけを示します。関係者への説明が上手で、対人の調整能力は優れています。説明資料の作成も得意です。

個人ではたどり着けない遥か先のゴールに向かって、組織を動かして成功に導く役割なのです。

極論すれば、ITスキルは不要で、大きな組織の中で「最適化」と「調整」に特化したスキルを極めているのです。

中小企業の情シス部長の特徴

一方、中小企業の情シス部長は違います。

部下は少なく、人手不足なため「プレイングマネージャー」となります。

自ら手を動かしてITを実装することもあれば、ベンダーと直接交渉したり、各プロジェクトで先頭をきって調整したりします。

現場やベンダーと細かな話ができること、ITシステムを自ら触ることができること、主体的に取り組めること。

これらが、中小企業の情シス部長に求められるスキルです。

もし、このような状況で、大企業のように部長席に座って「受け身」で待っていたらどうなるでしょうか?

小さな情シスでは、全員がヘルプデスクを兼務しながら、自らのタスクで大忙しです。

誰も会議を設定しません。誰からも相談が来ません。誰もかまってくれないのです。

情シス部長も自らが企画してタスクを生み出し、旗を振って現場やベンダーと交渉し、手を動かないと、何も進まないのです。

ボーッとしていると、周囲に置いてけぼりをくらうだけです。

小さな情シスの部長は、受け身ではなく、主体性が求められます。チームプレーよりも個人で打開できる力が求められるのです。

つまり、大企業と中小企業では、情シス部長に求められるスキルがまったく異なるのです。

もはや、別の「職業」と言えるでしょう。

同じ情シス部長でも別職種

大企業の情シス部長と中小企業の情シス部長で、どちらが良い悪いはありません。どちらも専門スキルを必要とする大変高度な職種だと思います。

しかし、その違いを認識しないまま情シス部長を外から採用しようとすると、どうなるか…ということです。期待外れな結果は、採用する方とされる方の両方が不幸になってしまいます。

貴社のIT部門・情報システム部門は、いまはどのステージにいますでしょうか?そこに求められる情シス部長の役割は何でしょうか?

DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。