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士気を上げるプロジェクトオーナーのちょっとした行動とは?

2018

6/18

プロジェクトオーナーの姿勢2パターン

「別件が入っちゃって出れないからよろしく」

A社のプロジェクトオーナーの言葉です。このセリフ自体は珍しいものではありません。なぜなら、オーナーは役員クラスであり、社内で最も忙しい人の一人。一日中打ち合わせが入り、急な割り込みも日常茶飯事です。より緊急かつ重大な会議に出るのは当然のこと。

このようなオーナーには必ず常套句があります。

「全てPM(プロジェクトマネージャー)の〇〇さんに任せているから」

しかし、報告会を2回、3回と欠席が続くと、欠席が慢性化していきます。気付くと半年以上もそのプロジェクトに関わっていませんでした。

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「別件が入っちゃったから、悪いけど時間をずらして」

B社のプロジェクトオーナーの言葉です。この方も負けず劣らず忙しい方。ずらすにも、朝早くか夜遅く、隙間の15分間だけなど、ほぼ選択肢がありません。それでも、必ず時間を割き、話を聞きます。

「いや、そこまで無理に出席されなくても…」とこちらが恐縮してしまうほどです。でもそのオーナーは必ずこう言いました。

「このプロジェクトは重要だから」

オーナー次第でプロジェクトは楽しくも苦しくもなる

オーナーのプロジェクトへの関わり方は、プロジェクトの「士気」に大きな影響を与えます。

A社の場合、任されたPMは意気に感じて、それ自体は悪いことではありません。しかし、「任せた」という言葉は、時に悪い方に作用してしまいます。

部門間調整やベンダー調整でハードな交渉が続き、進捗が停滞していきました。
PMは責任感が強すぎるため、オーナーに頼らず解決しようとします。プロジェクトメンバーも全員頑張っていますが、次第に閉塞感が漂い、消極的になっていきます。ある時、疲れた表情でPMはこう漏らしました。

「オーナーはこのプロジェクトに興味がないので仕方がない」

この後、プロジェクトは厳しいものになります。他部署の役員から「もっとしっかりやってくれないと困る」と言われました。ベンダーも大幅なテコ入れをすることはなく、スケジュールはどんどん遅れていきました。

一方、B社はオーナーの後ろ盾があるので、怖いものはありません。プロジェクトメンバーは、他部署やベンダーとの「ハードネゴシエーション」も次々と成功させていきます。

「何かあったら私も出席するのでいつでも呼んでくれ」

と言われていたものの、オーナーが出ることもなく、プロジェクトは無事に終わりました。

オーナーの姿勢がプロジェクトの運命を左右する

プロジェクトオーナーの出席率が問題といっているわけではありません。オーナーは多忙なので、毎回出席することは不可能ですし、必要もありません。

プロジェクトオーナーの接し方・言葉の掛け方が、プロジェクトの運命を大きく変えてしまうということです。

オーナーがそのプロジェクトを軽視していると、その気持ちがちょっとした行動に表れていきます。メンバーには必ず伝わり、士気が一気に下がります。なぜなら、メンバーの「自己重要感」が満たされないからです。自分は大した仕事をやっていないと卑屈になります。大きく改善しようという積極的な姿勢は失われ、もめ事を避け小さく無難にまとめようとします。

一方でオーナーが積極的な関心を示すと、プロジェクトの士気は大きく上がります。メンバーは「自分は重要な任務を任されている」と大きな改革を果たす原動力となります。「失敗してもオーナーが何とかしてくれる」という安心感は、失敗イメージよりも成功イメージを強くします。それは、結果的にオーナーの手間がかからない成功プロジェクトになっていきます。

もし、あなたがA社のPMだとしたら、オーナーを無理やりにでも関わらせるようにしてください。朝早く、夜遅く、わずか15分でもいいので、オーナーのスケジュールに予約してください。

最初は形だけでも構いません。継続することで、オーナーは関心が高まり、メンバーの士気も上がります。関心を示さないオーナーは問題ですが、オーナーを巻き込めないPMも問題があるといえます。「オーナーを利用してでもプロジェクトの士気をコーディネートする」という当事者意識を持つことが重要です。

御社のプロジェクトはA社とB社のどちらのタイプでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。