2022
6/29
複数ベンダー体制の提案
「プロジェクト体制を説明します」
あるプロジェクトで、ベンダー選定を支援していたときのこと。声をかけていた1社から複数ベンダーによる共同体制の提案を受けました。
基幹システムの「販売管理」本体はA社、「経費精算」サブシステムはB社が担当するというもの。
このようにベンダーが複数で構成され、どちらも下請けではなくプライムベンダーというケース。各領域でパッケージシステムが異なり、それぞれを保持するベンダーと共同で提案してきています。
いわゆる「マルチベンダー」の提案です。
提案評価として、共同提案はどのように考えるべきでしょうか?
ハイリスク・ローリターン?
マルチベンダーの場合、それぞれの業務領域において、担当するベンダーとユーザー部門が別々に検討を進めることになります。
それ自体は、問題ありません。各々で専門家と関係者で細部をつめていくには、最適な体制です。
問題は、異なるベンダーが構築したサブシステム間での「整合性」や「連携部分」です。この部分をしっかりと確認しないと、次のような問題が発生します。
・システム間で機能重複が発生する
・複数システムで同一項目の多重入力が発生する
・機能の漏れ、エアポケットが発生する
・システムをまたがる業務フローが複雑になる
・システム間の整合性や連携部分の責任が曖昧になる
通常であれば、ベンダー側のプロジェクトマネージャー(以降、PM)に「しっかり整合性をとってください」の一言で済みます。
不具合が発生したら、窓口はベンダーPMとなるので、そこと調整するだけです。
ところが、共同ベンダーの場合は、様相が大きく異なってきます。
それぞれのベンダーにPMがいて、窓口が分かれています。
どちらのベンダーに問い合わせすべきか、まずはユーザー側で切り分けを行わなければなりません。問い合わせ先を間違えると「たらいまわし」になることもあります。
グレーな領域の場合、ベンダー間で責任をなすりつけ合い、RFPで要求を明記していないと、ユーザー側のミスとも言われかねません。
これらを防ぐためには、どうすればよいのでしょうか?
ユーザー側で、ベンダーに伝える仕様に責任を持つ必要があります。問題が発生すればベンダーを適切に集めて検討の場を設定します。ベンダー間の合同検討会議をファシリテーションし、全体設計を考え、サブシステム間で整合性を確保していくことが必要となります。
つまり、ユーザー側に極めて高いレベルで「プロジェクトマネジメント」と「ファシリテーション」が求められるということです。
この部分だけ切り取ると、共同提案は「ハイリスク・ローリターン」のように感じてしまいます。
しかし、別の見方もできます。
現在は、クラウドサービスが主流となり、パッケージングされたSaaSを導入するケースが増えてきました。
SaaSを組み合わせて業務システムを構築していくケースは、今後増えてくる、ということです。
それにより、柔軟なシステム構成を組むことができ、システム全体を最適化することができます。パッケージなので、費用も抑えることもできます。
また、共同ベンダープロジェクトは、ユーザー企業側がとても苦労しますが、その過程で、1つのプロジェクトでは得られない濃い経験が得られます。
つまり、ユーザー側に「柔軟なシステム構成」と「システムを組み合わせるノウハウ」が蓄積され、マネジメントやファシリテーションが得意な「PMやPMO人材の急成長」も得られるのです。
ユーザー企業側にも大きなメリットがあるということ。
マルチベンダー提案は「ハイリスク・ハイリターン」なのです。
攻めの情シスへの特急券
マルチベンダー体制は、ベンダー選定において評価項目の1つにすぎません。
ただ、リスクが高いからといって、その理由だけで選択肢から外すべきではありません。
ここで、私から大事な提案があります。
このようなマルチベンダーのプロジェクトこそ、情シスがPMOをやりませんか?
腕の見せ所です。スキルもメチャクチャ伸びます。得られる経験値も3倍です。
情シスのプレゼンスも間違いなく高まります。今後のキャリアパスを描く上でも、間違いなくプラスになります。
やらない理由はないですよね?
貴社の情シス・IT部門は、複数ベンダーの共同プロジェクトに積極的なスタンスでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
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