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攻めの情シス研究所

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情シスロックインはなぜ発生するのか?

2022

7/29

自作自演の情シスロックイン

「あなたが経営者をそそのかしたから、おかしなことになった」

ドラマのようなセリフを頂くことがあります。

グランドデザインでは、まず「現行調査」というフェーズがあります。そこで、現行システムをヒアリングするのですが、そこで事件はよく起きます(苦笑)。

A社の情報システム部の部長にヒアリングしたときのこと。

現行システムがすべて「オンプレミス」で構成されていました。サーバー管理は、すべてその部長が行っています。一日中、サーバールームに閉じこもることも多いとか。サーバーの配線や設定をするのがとても楽しいようです。

そんな中で言い出しにくかったのですが、今後の構想として「全面クラウド化」について切り出したところ

「セキュリティ事故があったら、あなたが責任をとってくれるのか?」
「あなた達で勝手にやってくれ。私は協力しない」

と吐き捨てて、会議室を後にされました。

もう一つ、別の事例を挙げます。

B社でも、情報システム部の部長にヒアリングしました。

その現場では、顧客からの要望を柔軟に対応するため、すべて「エクセルマクロ」で対応していました。そのエクセルに入力すると、見積書や注文書、請求書などが自動で出力されます。

ベースとなるエクセルは同じですが、顧客によって管理すべき項目が異なります。そのため、100顧客に対して100エクセル作成し、100マクロ化しています。

情シスメンバー5名いましたが、全員総出でマクロ対応に追われていました。ただ、マクロのスキルはどこにも負けないと誇らしげ。そのマクロが実際に動くところも見せてもらい、説明も熱が入ります。

しかし、このマクロが「属人化」と「保守性」で大きな問題となっていました。

こちらも言いにくかったのですが、「システム化」の方向で進めていると切り出しました。すると

「システム化できないから我々がマクロでやっているんだ」
「正直、迷惑だ。これ以上、巻き込まないでくれ」

と、こちらも会議室を後にされました。

2社とも共通しているのは、全社的な変革に対して「現場たたき上げ」の情シス部長がブレーキを引いていること。表向きは「多忙で余力がない」とのことでしたが、ヒアリングしてみると、そもそもやるつもりがありません。今の業務に固執していました。

このように変革プロジェクトやDXで「情シス」が大きな抵抗勢力となる場合があります。しかも、そこまで珍しくはありません。

なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか?

情シスの原因と結果の法則

一般的に、変革プロジェクトを進めようとすると「現場のユーザー」が抵抗勢力になりがちです。しかし、それ以上にやっかいなのは「情シス」の抵抗勢力です。現行システムを人質にとり、現行調査も協力してくれないからです。

本当は、情シスが新システムを先導して、新しい技術を取り入れて、会社全体をバージョンアップしてほしいのです。しかし、保守的なのです。

なぜなら、その情シスは、ずっと保守の現場で「減点主義」で評価されてきたからです。システムは動いて当たり前、バグが出ないで当たり前、という環境下では「枯れた技術」でリスクを排除することが優先されてきたからです。

現状の情シスを非難するのは簡単ですが、経営がそうなるように「長い時間をかけて教育した」ともいえます。

積極的にローテーションをかけて、いろいろな現場や様々なシステム、新しい技術を経験させていれば、また違った展開もあったでしょう。しかし、システムの保守だけを指示され、やらされてきた情シスは、文字通り「保守的」になります。

ずっとその「守り」のスタンスでやってきたのに、急に「攻めろ」と言われても無理というものです。

しかし、この状況を放置するとどうなるのでしょうか?

若手が定着せずに、辞めていきます。新しい技術が学べずに、将来に不安を感じるからです。その結果、情シスの「高齢化問題」に発展します。

また、保守的な情シスを見切り、経営層は「IT戦略室」や「DX推進室」など分室化を進めていきます。有望な若手は、こちらに流出していきます。

すると、情シスは評判が悪くなり、さらに殻に閉じこもります。「守りのIT」と「攻めのIT」で組織が完全に分断され、シナジーが生まれません。会社全体で悪循環に陥るのです。

では、どうすればいいのでしょうか?

新しいことをやるには、何かを捨てないといけません。

情シスの役割を取捨選択して「やめるべきもの」「アウトソースするもの」を見極めていきます。そして、情シスが「攻め」の役割を担えるよう余力を創り出す。

そこを疎かにして、捨てずに詰め込もうとするから、変にこじれてしまうのです。

この組織デザインは、経営トップの役割といえます。トップダウンで柔軟に情シスを変えていける企業が、ITを武器に勝ち残っていけるのだと考えます。

情シスの役割を見直す

本来は情シスが「守り」も「攻め」も担うべきです。

「守り」を知っているからこそ、スムーズに攻めに移行できます。現状を把握しているからこそ、攻めの攻撃力もアップするのです。

ここが分断され、攻撃力が半減している企業が多いのではないでしょうか。

時代が変われば、「情報システム」の在り方も変わります。

つまり、「情報システム部」の在り方も変わります。

冒頭の「情シスロックイン」は、組織と時代のギャップが出ているということです。放置していると、時代に乗り遅れます。

弊社は一貫して「情シスは会社のエンジン」と主張しています。情シスの在り方で会社の成長に大きく差がつく時代です。

貴社では、時代に合わせて情シスの役割を見直していますでしょうか?

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DXで経営戦略を仕組み化する技術

情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平

情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。

システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。

近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。

膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。

主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。