2022
8/30
経営戦略がまだ出てこない
「まだ経営戦略が決まってないので、IT戦略を作れません」
ある情シス部長から言われました。この会社は3年に1回「IT戦略」を策定しています。それは「経営戦略」を構成する一部として作ります。
そのため、経営戦略の方針が決まっていないと、どの方向に向かうべきか不明のため、勝手に作るわけにはいかない。
・・・という状況だそうです。
しかし、果たしてそうなのでしょうか?
経営戦略がないと、IT戦略は作れないのでしょうか?
レガシー時代のIT戦略
いろんなサイトや書籍をみると、こう書かれてあります。
「経営戦略の構成の1つがIT戦略」
「経営戦略とIT戦略は、整合性をとらないといけない」
これは確かにその通りです。経営戦略は、会社全体の総合的な視点です。切り口を分ければ、マーケティング戦略、営業戦略、財務戦略、人事戦略など、いくらでも分けられます。
その中の1つがIT戦略(情報戦略)です。
そう考えると、トップダウンで全体方針が示されて、そこから各領域で詳細化していくのが合理的に思えます。
しかし、それでいいのでしょうか?
昔はそれでも良かったのでしょう。システム化されていない領域を指名して「システム化する」と宣言するだけでした。アナログだったものをデジタルに置き換え、システム化するだけで、一大プロジェクトです。
それらのプロジェクトを複数企画して、束ねれば、IT戦略になりました。
DX時代のIT戦略
ところが、今は状況が異なります。
DXで差別化される時代です。
デジタルをうまく使わないと、取り残されてしまいます。デジタルを使いこなした企業が勝者となる時代です。
単純にシステム化できる部分は、もう終わっています。ある程度システム化されている前提で、さらなるITやデジタルの活用・高度化を目指していかないといけません。
一方で、ITの専門家でない人が立案した経営方針には、ITの最新状況や技術には言及していないことが多くあります。
待ちに待った経営方針が出てきて、確認してみると、ITについては抽象的すぎて何もヒントを得られなかった、というケースも珍しくありません。
これをふまえると、逆なのです。
まず、IT戦略を立てる。
その後に経営戦略とすり合わせる。場合によっては、経営方針側に反映してもらう。
例えば「セキュリティ強化」などは、経営方針から降りてくることは、ほとんどありません。
同業者がセキュリティ事故を起こせば別でしょうが、普通は売り上げが上がるわけでもなく、逆にコストがかかるものなので、焦点が当たりません。しかし、ひとたび事故を起こせば、今後の経営が傾くほどのダメージを負いかねません。
テレワーク環境を整え、クラウドを活用することで、外部からアクセスできる環境となりました。物理的なセキュリティだけではなく、サイバーセキュリティの脅威も増しています。今の時代に即したセキュリティにアップデートする必要があります。
これはITの専門家として、提案すべき内容だといえます。
また、情シス・IT部門は人手不足が深刻です。役割が多岐にわたるため、いつも多くのタスクを抱え込んでいます。
では、どれだけ人手が不足しているのか。何人ほしいのか。
情シスの役割として、どこが手薄なのか。
外注なのか内製なのか。
ここを黙ってしまうと、逆に「コスト部門」としてコスト縮小指令だけが下りてくるかもしれません。
IT領域の人材戦略は、情シスから方針を上げないと議論が始まらないのです。
さらに、ITの最新技術は、ビジネス構造すら変えてしまいます。
現時点でいうと、ビッグデータ、AI、IoT、VR/MR、5G、メタバースなどの技術を事業や業務に活用することで、今とは全く異なる「在り方」で加速させられるかもしれません。
受け身ではなく積極的にITの領域から提案していく。
それが、デジタル化時代のIT戦略の手順であり、CIOや情シス部長の役割といえます。
経営者もそれを期待して、その役職を任せているはずです。
IT戦略は情シス責任者としての腕の見せ所
IT戦略の中心が「基幹システム導入」という時代は終わりました。
今は経営戦略の中でもIT戦略が「ポイントゲッター」であり、その良し悪しが経営戦略の出来を左右するといえます。
情シスの視点で何ができるのか。
多様化したITやデジタルで何を実現できるのか。
ぜひ、経営者が心躍るようなIT戦略を立てて、経営戦略と前向きなすり合わせをしてほしいと思います。
それがCIO、情シス部長の役割です。
貴社のIT戦略は、どのような手順で策定していますでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。