2023
4/05
サンプルが見つからない
「IT戦略のサンプルをもらえますか?」
情シス部長やCIOの方から、よく聞かれます。
IT戦略の立案フェーズでは、必ず言われます。
なぜ、皆さん聞かれるのでしょうか?
理由は明白です。
IT戦略の「サンプル」をインターネットで探しても、見つからないからです。
書籍を調べても、専門書も存在しません。
ですが、私はいつもこう答えます。
「探せばサンプルはたくさんありますよ!」
皆さま、狐につままれたような表情になります。
これは、一体どういう意味なのでしょうか?
ITは手段にすぎない
そもそも「IT戦略」とは何でしょうか?
IT戦略とは「企業がITを用いて目標を達成するための計画や方針」を指します。
つまり、ここで登場する「IT」は手段に過ぎません。
では、ここから「IT」を取り除いてみましょう。
「企業が目的を達成するための計画や方針」となります。
これだとどうでしょうか?
そう、「経営戦略」になります。
そして、経営戦略の代表的な資料は何でしょうか?
そうです。「中期経営計画」です。
こちらは、インターネットで検索すれば、無数に転がっています。
それも有名な企業ばかりです。
なぜなら、上場企業には、株主に説明責任があるからです。
そのため、しっかりと入念に作られています。
見栄えもよく、論点も整理されていて、ストーリーも分かりやすい。
世の中の動向も記されていて、きちんと定量目標も示されています。
こんなに参考になる資料は、他にはありません。
実際に使われたものなので、生きた教科書といえます。
つまり、IT戦略のサンプルとは「中期経営計画」なのです。
使いまわすコツ
では、どのように参考にし、使いまわしていけばよいのでしょうか?
検索すれば大量にヒットするので、まずは20社以上に目を通してみることをお薦めします。
すると、共通するパターンが見えてきます。
一番多いのは、以下のパターンでしょう。
前期振り返り ⇒ 外部環境の変化 ⇒ 目指す姿 ⇒ 戦略方針 ⇒ 数値目標
ただし、相談にくる皆さまには、そもそも「前期戦略」がない場合も多くあります。その場合は、次のパターンの方が参考になるでしょう。
自社のビジョン ⇒ 自社の背景 ⇒ 外部環境の変化 ⇒ (以下は同じ)
また、大きな企業では、10年先を見据えた「長期ビジョン」を冒頭で示したり、「10年後のありたい姿」を最初に語ったりしています。
資料全体を「ワクワク感」で包み込み、高度なストーリー展開をしているといえます。
さらに重要なのは、より大企業になるほど「数値目標」が事業ごとに、しっかりと細分化されていることです。
計画段階で「数字」から逃げ出したくなる人は多いと思いますが(私もそうです)、そんな逃げの姿勢にも喝を入れてもらえます(苦笑)。
戦略は自由だ
ここで私が最も参考になったこと、というか勇気をもらえたことをご紹介します。
それは「戦略の書き方に決まりはない」ということ。
ストーリーに王道はあるものの、各社それぞれで流れはオリジナルです。
だから変にパターンに縛られすぎる必要はなく、自社で一番書きやすいストーリーにすればよいと考えます。
実作業的に言えば、一番自社に近しい中期経営計画を探して、それをアレンジしていけば、効率的に作ることができます。
「そうは言っても、中計をIT戦略にアレンジするのは大変では?」
と思われるかもしれません。
でも、私の考えは逆です。
経営戦略や事業戦略の場合は、手段が多岐に渡ってしまいます。
一方で、IT戦略は手段がITに限定されます。
ITなら具体的に書きやすいですし、予算も他の手段に比べて見積もりやすいといえます。
言い換えると、中期経営計画のフォーマットから「引き算」して作ることができます。
すると思考がシンプルになり、「必要以上に構えなくても大丈夫だ」と安心してくるのではないでしょうか。
必要以上に構えなくても大丈夫!
「その中計サンプル一式をもらうことはできますか?」
私は中期経営計画の中でも、特にお気に入りの20社分を大切に保管していて、いつも参考にしています。
それをたまにお見せして説明することがあるのですが、これを欲しいと言われます。
「もちろんお渡ししますよ」と伝えると、先方はとても安心した表情を見せます。
やはり経験したことのない人にとっては「IT戦略」は非常に重荷なのでしょう。
そのような方が一人でも多く、苦手意識を払拭して、合理的かつ効率的にIT戦略を作り込んでいただければ幸いです。
貴社のIT部門・情報システム部門の部長やCIOの方は、IT戦略の「サンプル」をうまく活用できていますでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。