2026
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目 次
「RFPだけ」で突き進もうとする情シス
「SFAなので、RFPだけで考えています」
ある情シスメンバーが、そう言いました。
A社では、営業支援システム(SFA)の入れ替えを計画していました。現行のSFAは存在するものの、ほとんど使われていません。
・スケジュール連携ができない
・基幹システムとも連携できない
・顧客で管理したい項目が足りない
・案件単位で管理できない
・スマホで使えない
機能不足のオンパレードで、現場から見放されていたのです。そこで新たなSFAを導入すべく、ベンダー選定を行うことになりました。
聞けば、RFP(提案依頼書)はすでに作成済み。「レビューしてほしい」という依頼でした。
私は、RFPを開く前にこう聞きました。
「その前に、RFI(情報提供依頼書)は出さないんですか?」
メンバーの言い分は、こうです。
「SFAなんて、どれも似たような機能ですよね。パッケージとして確立されているので、そこまで慎重にならなくても大丈夫かと」
「どれを選んでも、パッケージだから大きな失敗はしないと思います。だいたい同じですから」
「それに、RFPは営業部門のキーパーソンにも入ってもらって、かなり作り込みました。完成度には自信があります。だから、RFIは省略して、RFPだけで十分だと考えています」
なるほど、と思いました。RFPへの自信は本物です。
しかし、RFIは作らず、RFPだけで本当によいのでしょうか?
RFPの完成度と、RFIはまったく関係ない
まず、ハッキリさせておきたいことがあります。
RFPの完成度と、RFIを出すかどうかは、まったく別の話です。
仮にRFPが完璧だったとしましょう。では、そのRFPを「出す先」は、必ず正しいと断言できるのでしょうか?
これは、採用面接によく似ています。
面接の質問をどれだけ練り込み、評価シートをどれだけ精緻に作り込んでも、そもそも面接に呼ぶ相手を間違えていたら、すべては無意味です。
優秀な人材が応募者リストに一人もいなければ、どれだけ面接がうまくても、その中から「最もマシな人」を選ぶだけになります。
RFPは、面接です。RFIは、その手前の書類選考なのです。
その5社は、本当に正しいのか?
ここで、SFAという領域の特性を考えてみましょう。
SFAは、非常に成熟したパッケージ領域です。探せば、軽く30社以上は出てきます。
では、その30社すべてにRFPを渡せるでしょうか。
不可能です。提案を受け、評価する側の負担が大きすぎます。現実的に渡せるのは、せいぜい多くて5社。適正は3〜5社といったところです。
ここで、冷静に問い直してください。
30社の中から選んだその5社は、本当に正しいのでしょうか。自社にふさわしい5社を、本当に選び切れているのでしょうか。
選定を間違えるパターンは、大きく3つあります。
① 「機能」のミスマッチ
本来は「営業プロセスの標準化」「案件管理」「経営ダッシュボード」が重要なのに、候補に入れた数社がすべて「名刺管理寄り」や「簡易CRM寄り」だったとしたら、その時点で土俵が間違っています。
あるいは、見積機能は基幹システム側にすでにあって、本当は「見積連携」がほしいだけなのに、見積機能がウリのSFAにRFPを出しても、噛み合うはずがありません。
② 「業界」のミスマッチ
自社の業界向けではなく、まったく別の業界に強みを持つSFAに目をつけてしまう。営業のスタイルも、管理したい項目も業界ごとに違うのに、見た目の機能の華やかさだけで候補に入れてしまう可能性があります。
③ 「規模」のミスマッチ
大企業向けの高機能なSFAばかりにRFPを出してしまう。しかし、本当は中堅企業向けの軽量なSFAで十分だった、ということもあります。オーバースペックは、コストにも定着にも跳ね返ってきます。
仮に、こうした「ハズレの5社」にRFPを送ってしまったら、その時点で選定はもう失敗です。
そして、最も怖いのは、その失敗に気付けないことです。
なぜなら、選定は「選んだ5社の中での相対評価」だからです。
ハズレばかりの中から、最もマシなベンダーを選び、「比較検討した結果、これがベストだ」「システムは所詮こんなもんだ」と、自社の選択を正当化してしまうのです。
土俵そのものが間違っていることに、最後まで気付けません。
パッケージは「選んだが最後」、やり直しがきかない
もう一つ、パッケージならではの事情があります。
パッケージは、スクラッチ開発と違い、すでに確立されたシステムです。カスタマイズもできますが、追加費用はかかり、品質も課題となり、納期も遅れます。
パッケージの効果が最大化されるのは「ノンカスタマイズ」で、自社の業務をシステム側に寄せたときです。業務が標準化され、世の中のベストプラクティスを自社に取り込めるからです。
ここに、スクラッチ開発との決定的な違いがあります。
極論すれば、スクラッチ開発なら、要件定義を頑張ることで、ある程度は取り返せるかもしれません。一から作るのですから、調整の余地があります。
しかし、パッケージ選定に、要件定義はありません。あるのは「Fit&Gap」、つまり「自社の業務とパッケージの適合・不適合の確認」と、そこからのカスタマイズ(を我慢する)検討だけです。
つまり、パッケージは選んだが最後、やり直しがききません。選定ミスは、取り返せないのです。
だからこそ、SFAという「ザ・パッケージ」こそ、最初の候補選定が決定的に重要なのです。
あらためて、RFIとRFPの役割を整理しておきましょう。
RFIは、ロングリストからショートリストへの絞り込みです。多くの候補の中から、土俵に乗せるべき相手を見極める工程です。
一方のRFPは、最終的なFit&Gapの確認と、導入パートナーの決定です。
言い換えれば、RFPは「選定プロセス後半の精度」を上げるもの。RFIは「そもそも候補に入れる相手を、間違えないため」のものです。
RFPが確かに重要であることは、言うまでもありません。しかし、SFAのような成熟パッケージにおいては、最初の候補選定の重要度が、極めて高いのです。
候補選びを「博打」にしてはいけない
「RFIを出していなかったら、ヤバかったです」
冒頭の情シスメンバーは、後にそう言いました。
A社は、RFPの前にRFIを作成することにしました。
まず、SFAパッケージを30社リストアップ。その中から、自社の業界にマッチしそうな12社をピックアップし、RFIを送りました。RFIは、RFPと違って大量に渡せるのも大きなメリットです。
12社から回答を受け取り、自社の要求する機能との適合度が高い4社に、RFPを送ることにしました。その後、提案書を受け取り、プレゼンの評価を経て、あるベンダーに決定しました。
ここで、強調したいことがあります。
最終的に選ばれたこのベンダーは、当初RFPを送る予定の中に、入っていませんでした。
それだけではありません。惜しくも2位・3位となったベンダーも、当初のRFP送付先には入っていなかったのです。
もし、あのままRFIを省略してRFPを送っていたら——おそらくA社は、今回4位になったベンダーを選んでいたことでしょう。
パッケージは、選定がすべてです。
RFPを送る先を、博打にしないでください。多くの選択肢の中から、慎重に絞り込むこと。その絞り込みにこそ、RFIは絶大な効果を発揮します。
貴社のIT部門・情報システム部門は、RFIを活用した「パッケージ選定プロセス」を確立できていますでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。