2024
3/06
自力で頑張ろうとするPMO
「プロジェクトオーナーの○○取締役に相談してみたらどうですか?」
「それはちょっと・・・」
ある現場で、情シスPMOのAさんが苦戦中です。
事業部がまったく動いてくれないとのこと。
毎週の進捗定例会で、事業部のタスクを確認すると
「やっていません」
「時間がなくて、できていません」
と平然と言い放ちます。
1回や2回ならまだしも、かれこれ1ヶ月以上、まったく進捗がありません。
Aさんから相談を受けた私は、プロジェクトオーナーに相談するよう進言しました。しかし、Aさんは遠慮するのです。
Aさんから、次のように言われました。
・自分たちの力でやりたい
・変に上に迷惑をかけたくない
・情シスだけでやれるところを見せたい
・上の権力を借りるのはカッコ悪い
・事業部に後で恨まれそう
上に頼ることに対して、ネガティブな言葉が並びます。
自力で頑張ろうとする姿勢は大事ですが、PMOとしてそれでよいのでしょうか?
虎の威を借る狐
「虎の威を借る狐」という言葉があります。
権力のない者が権力のある者を後ろ盾にして威張ること。
ネガティブな意味で使われます。
Aさんも、これが嫌なようです。
ですが、情シスは「虎の威」を借りるべきと考えます。
なぜなら、情シス単体では「権力」がないからです。
だからこそ、経営層を後ろ盾にすべきです。
ボトムアップとトップダウンは全くの別物
「虎の威」を借りなくても、ボトムアップによる「改善」は可能です。
例えば「ノーコード・ローコードツール」で、次々にシステムを実装し、現場の利便性を高めていけます。「改善」を積み重ねていくことはできます。
現場からは感謝され、依頼が殺到し、情シスは人気者になれるでしょう。
しかし、ボトムアップでは大きな「変革」はできません。
なぜなら、業務フローの大きな変更、ビジネスモデルチェンジ、新規サービスの創出などには「経営判断」が伴うからです。
現場には、大きな変更を行う「権限」はありません。現場は従来のルーティンを続けることが仕事だからです。
情シスにも権限はありません。情シスがいくら吠えたところで、現場は「変革」を進めることはできないのです。むしろ、現場を知らない部外者に対して「知ったふうな口を利くな」と反発されてしまいます。
つまり、情シスが変革プロジェクトを進めていきたいなら、経営層の「影響力」を行使して、現場をトップダウンで変えていくしかありません。
変に遠慮したり、自分たちだけで何とかしようという「美学」は、変革にブレーキをかけるだけです。
ボトムアップで「変革」できるという考えは、幻想にすぎないと思います。
情シスがPMOとして存在感を放ち、1ランク上のステージに立ちたいなら、経営層と積極的に連携し、「虎の威を借る」スキルを身につけるべきです。
ただし、勘違いして「威張って」はいけません(苦笑)。
まれに、そのダークサイドに落ちていく人を見かけます。
周りから嫌われ、距離を置かれ、むしろ変革から遠ざかってしまいます。
後ろ盾を得ながらも、謙虚に振る舞うのがポイントです。
変に威張るのではなく、泥臭く現場に寄り添い、でも背後で経営層がニラミを効かせる。これが情シスPMOのあるべき姿だと考えます。
情シスに影響力がなければ、単なるお人好しで、いいように利用され、軽んじられるだけです。
PMOとしての覚醒
「すみません、ようやく時間がとれたのでやりました」
Aさんは取締役に相談しました。取締役はすぐに動きます。すぐに関係者を呼び集めて、指示を出したそうです。
翌週の進捗会議では、急にタスクが動き出して、プロジェクトが進み始めます。
その時、Aさんは少し後ろめたそうでした。
ですが、変革において「保守勢力」とぶつかるのは当然のこと。
そこを気にしすぎると、何も変えられません。
現場に配慮する気持ちは大切ですが、保守勢力に肩入れしすぎず、経営方針に従い、変革に向けて「お尻を叩く」ことも重要です。
その後、Aさんは慣れていきました。
事業部に堂々と進捗を確認し、経営層とも定期的にコミュニケーションをとるようになりました。
持ち前のホスピタリティも発揮し、現場との関係性は悪くもありません。
将来のエースが覚醒する瞬間に立ち会えたのかもしれません。今後が楽しみです!
貴社のIT部門・情報システム部門は、大きな変革を成すために「虎の威を借る」強靭なマインドを持っていますでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。