2024
4/04
まだまだ落ち着かない電帳法の運用
「電帳法がなかなか手離れしなくて困っています」
ある現場の情シスメンバーが愚痴をこぼします。
電子帳簿保存法(電帳法)対応が今年の1月から開始となり、3ヶ月が経過しました。
電帳法対応システムは、無事に稼働しています。
システムに求められる基本要件は、シンプルです。
・タイムスタンプを付与する
・変更できなくする
・検索できるようにする
このため、多くの現場では「パッケージシステム」で対応しています。
パッケージなので、一定の品質も確保されています。バグも数えるほどしか発生していません。
それなのに、情シスは対応に追われています。
現在、現場ではどのような課題が発生しているのでしょうか?
そして、情シスはどのように動けばよいのでしょうか?
「受領側」は比較的問題なし
電帳法システムは、大きく2つに分かれます。
「受領側」と「発行側」です。
受領側の代表的なものは「経費精算システム」です。
お店から「受領」した領収書や、取引先から「受領」した見積書、請求書などを電子保存するものです。
この経費精算システムは、一般的にどの現場でも「パッケージシステム」を導入しています。パッケージなので、「バージョンアップ」で対応してくれます。
今まで通りアップロードしたファイルが、そのまま電子保存されるだけです。
使い勝手はほぼ変わらず、運用フローも変わらないため、現場の混乱はほぼない状態です。
そのため、受領側はどの現場も大きな問題は発生していないよう感じます。
「発行側」は単純ではない
では、「発行側」はどうでしょうか?
発行側は、困ったことに「見積書」「契約書」「請求書」がそれぞれ別の仕組みで運用されているケースが多いのです。
このうち、「請求書」の代表的なものは「販売管理システム」です。
この販売管理システムは、業務と密接に絡みます。そのため、多くの現場では「スクラッチ開発」や大幅な「カスタマイズ」等で、独自のシステムが構築されています。
一方で、「見積書」は別のシステムを使ったり、エクセルで個別作成したりしています。
他方、「契約書」については、まだ紙の押印が主流だったりします。最近では、電子契約システムに移行する現場も増えてきました。
このように「発行側」は、帳票ごとにシステムが異なり、かつ独自開発しているケースもあり、自動的にバージョンアップで対応されるわけではありません。個々に手をいれるのも、費用面と時間面で得策ではありません。
そのため、多くの現場は「電帳法パッケージシステム」を「外付け」で導入しています。
理想は、その外付けパッケージと各システムを自動連携すること。
しかし、そのためには各システムにカスタマイズが必要となり、大きな費用が発生します。タイトなスケジュールの中で、開発期間も十分にとれません。
そのため、多くの現場では「いったん運用でカバー」となりました。
運用カバーの問題
この「運用でカバー」の一番の問題は何でしょうか?
もちろん、運用負担が大きくなるという問題があります。しかし、電帳法においては、それ以上の問題があります。
それは、電帳法で義務付けられた帳票の「保管が漏れる」です。
電帳法フォルダに保管しなくても、業務は回ります。むしろ手間がかかる分だけ、スピードが犠牲になります。
そのため、ユーザーは「法的義務」を認識しつつも、後回しになったり、失念したりしていきます。
この発行側の帳票をいかに「漏れ」をなくし、「期限内」に保管するか。
これが大きな課題となっています。
情シスの立場
さて、情シスの話に移ります。
電帳法システムの導入に対して、情シスはどの現場も非常に頑張りました。
システム選定、導入時のシステム設定、受入テスト、マニュアル作成など、多方面において精力的に推進します。
動かないユーザーを尻目に、どれだけ尻拭いをしてきたことか。
その数ヶ月前のインボイス対応→電帳法対応と息継ぎなく対応に追われ、情シスは疲れ果ててしまいました。
このシステムの「運用」を早くユーザーに移管し、手離れさせたいと思うのは当然のこと。
一方で、情シスの評価は、この稼働後の「運用定着化フェーズ」で決まります。
ここでユーザーへの移管を急ぐと、ユーザーにとっては「押し付け感」が強く残ることになります。
せっかく今まで頑張ってきたのに、最後の最後に「情シスは何もやってくれない」「情シスは丸投げしてくる」とユーザーの評価を落とすのは非常にもったいないのです。
情シスのやれることは、まだまだあります。
・ユーザーの負担をより軽減する自動化ツールの開発
・保管漏れチェックツールの開発
・ベンダーとシステム改修調整
・システムマニュアルの改善
・ユーザーへの説明/啓蒙活動
・業務フローの見直し
情シスがすべてにおいて「手取り足取り」やるべきだとは思っていません。それだとユーザーの主体性が失われるからです。
ユーザー部門と役割を分担して「情シスは責任もってやるから、そっちもやってね」で、全体として安定稼働に向けて進めていけばよいのです。
そして徐々にユーザー部門の比重を増やし、段階的に移管していくべきでしょう。
最後まで攻めきる
「終わりよければすべて良し」という言葉があります。
情シスは、最後の「定着フェーズ」までしっかりやりきること。
最後まで攻めきるからこそ、「攻めの情シス」です。
ユーザーの「感謝」をもってクローズすることで、情シスのプレゼンスが爆上がりするのです。
現場との関係性もよくなるため、次のプロジェクトがより連携しやすくなります。
プロジェクトとは、その「連鎖」だと思います。
貴社のIT部門・情報システム部門は、電帳法の定着フェーズまで攻めきれていますでしょうか?
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情シスコンサルティング株式会社
田村 昇平
情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。
システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。
近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。併せて、「情シスをDX推進の中核組織」へと進化させる独自メソッドも確立してきた。
膨大な現場経験での数多くの失敗や板挟みとなる葛藤。それらを乗り越えてきた知見をもとに、机上論ではない「再現性のあるDX」を追求する実務家として、経営者・CIO・情シス部長と伴走している。
主な著書に『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』『DXで経営戦略を仕組み化する技術』がある。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。